ちろる

映画 聲の形のちろるのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.8
まず背景がとても美しい。特に水の描写は本当に透明感と光の描写が見事だったので、水辺のシーンがある度にワクワクさせられた。
しかし内容はこの大垣の緑豊かな長閑な風景とは似つかわしくないほどに、居心地の悪くなるようないじめ、シカト、そして自殺願望の暗い描写の連続。
なんだか全然救いがあるような気がしなくて最後の最後までゾワゾワした感情に苛まれたのは自分になにかを問いかけ続けてたからなのかも。
いじめをした記憶はないけど、多分いじめを見て見ぬ振りしたことはある。
子どもの頃仲間はずれになって悲しい思いをしたこともあるし、もしかしたら気づかないまま誰かを傷つけたことがあったかもしれない。
そんなような苦々しいことに蓋を閉めていい思い出だけにしてた私の記憶の蓋を少し開けられて、この登場人物の一人一人に重ねるとなんとも言えない渦が心の中でぐるぐる回り続けた。
そしてその結果気になり出したのは果たして硝子ちゃんは本当に救われ、傷は癒えてるのか。
これは所詮は将也の心の浄化の物語であって、硝子はその彼の過ちを正当化するための登場人物の一人にすぎないから彼女のトラウマは消えたのかはとても曖昧だ。
小学生の頃とはいえ将也のいじめの描写は六年生にしてはかなり胸糞だし、からかってたレベルでは済まされない気がした。このいじめの卑劣さと傍観した周りの無責任さの描写はとてもリアルで高校生活での将也のバツの描写はとても秀逸なのにラストのハッピー感とのバランスは少し歪で少しモヤモヤしたのは個人的な感想。

ただ、大切な事は相手の目の前に立ってしっかりと相手に伝えるようにしなきゃなにも関係性は作れないという当たり前のことが出来る人が少ないネット社会の現代にドキッとした一撃を与えるテーマであったことは間違いない。
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