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映画 聲の形のtjZeroのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.8
高校生の将也は、小学生の時、聴覚障害のある転校生をいじめてしまった過去を持つ。
その反動で、自身がいじめられるようになった彼は、孤立した学生生活を送っている。
自殺を何とか思いとどまった将也は、転落のきっかけを作ってしまった転校生・硝子と再会を果たすのだが…。

本編の始まりと終わりに、英語でのタイトル”The Shape Of Voice”が出る。
そうなると思い出すのが、あの『シェイプ・オブ・ウォーター』。
どちらも、口をきけないヒロインと、周囲から傷つけられている少年(または半魚人)との交流を描いてる。
水のモチーフが重要なのも両作共通。

本作でまずうならされるのが、いじめの描き方。
直接的な攻撃だけでなく、間接的、傍観者、善意に包んだ悪意…などなど、いろんなヴァリエーションのいじめが登場し、学生時代の閉塞感をリアルに再体験させてくれる。

そんな、窒息しそうな日常にある主人公を救ったのが、過去に傷つけてしまった少女への贖罪の気持。
彼女に思いを伝えるために必死に覚えた手話が、彼にとっては命綱、過酷な日常を救う酸素ボンベのような存在だったに違いない。

彼女との交流の中で、「周りの人たちの”声”をシャットアウトして、わざわざ聴覚障害を作り出していたのは自分の方だ」と気づかされる物語後半の反転があざやか。

本作の興行収入は23億、あの『君の名は』(250億)の1/10以下だけど、自分はこっちの方が感動したなあ。
”運命の人を探して逆転ホームラン”の『君』よりも、”身近な人を活かす犠牲バント”みたいな『聲』を静かに支持したい。
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