さうすぽー

映画 聲の形のさうすぽーのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.8
自己満足点 93点

Netflixの配信終了直前に観ました。

聲の形は凄く好きなアニメーション映画です。
おそらく、京アニ作品の中でも上位です。


ひねくれた事を言うと、
自分は昔から24時間テレビのドラマのように、障がい者を扱った感動ポルノ作品は嫌いです。
そして、いじめっ子といじめられっ子が最終的に仲良くなる話もあまり好きではありません。
だから、最初にこの映画を観る前は「どうせこれも感動ポルノなんじゃないか」と思って全然期待していませんでした。

しかし、この映画は違います。
人と違う所と向き合い、不器用な人と人との触れ合いを時に優しく、時に残酷に描いた人間ドラマの傑作でした!


主人公の将也はいわゆるガキ大将で、ヒロインをかなり酷く苛めていたので、最初はもちろん嫌いな感じで観ていましたが、高校のストーリーになっていって何故こういうことをしてしまったのかが理解出来るものになっていました。
明確な悪意を持っていたわけではなく、単に子供の好奇心であったり、自分と違う人の接し方かみ解らずにやってしまい、それが結果的に人を酷く傷付けてしまったのは興味深いと思うのと同時に凄く複雑でした。

また、ヒロインの硝子も最初はどういう人物かは理解出来なくても、ストーリーが進むにつれて段々と理解が出来ました。
それは単に明確な説明があるわけでは無いのですが、ヒロインの行動や表情、わずかな台詞で理解することが出来ました。
小学生の頃の彼女がした最後の行動は自分の境遇による同情や自己嫌悪もあるかもですが、ある種のストックホルム症候群のような状態なのか。そういう風にも思うのですが、そこまではまだ解りません。

その他のキャラクターも決して善悪かはっきり区別させずに描くところも素晴らしいです。


作画や演出に関しては、
監督の山田尚子による説明を多用させない静かな演出方法や「光」の演出が今作でも際立っていました。
また、小津安二郎の映画を観た後に今作を観ると、実写のような固定ショットを多様している所など、小津安二郎の影響もあるのかな?と思わせたりして面白いです。

少しケチ付けるとしたら、
小学校の先生や島田達をもう少し詳細に描いてほしかったところですかね。
ただ、原作でもそこまで描かれてないみたいなので、そこまで気にしないようにしています。


これは個人的な話なのですが、
自分は子供の頃、苛めを受けてきましたが、将也のように障がい者の気持ちをはっきりと理解せずにデリカシーの無いことをしてしまった事もありました(将也ほど酷いことはしていませんが)。
そのことを思い出すと今でも物凄く罪悪感にかられます。
自分は硝子のように苛められる側の人物でありながら将也や植野、川井さん達の側でもありました。
だからこそ、二人の境遇を体験したことある自分は何度も心揺さぶられました。
あのときどうすれば良かったんだろうとか、どう向き合えば良かったんだろうと感じています。もっと早くこの映画に出会っていればとも考えてしまいますが、出会えただけでも良かったのかなとも思います。

もちろん、"いじめ"は最低ですし許されない事だと思いますが、それが悪い事だったと理解して変わろうとするだけでも良いことなんだなと映画を観て感じました。

"障がい者との触れ合い"や"いじめ"といったデリケートな題材を扱うのは非常に難しい事だと思いますが、それを違和感無く描いたのは素晴らしいと思います。


この映画を"感動ポルノ"と言ってる人もいますが、そういう人は恐らく何を観ても感動ポルノと決めつけてしまう人か、よく考えられてない人としか思えないです。
この作品の登場人物達を"良い"と"悪い"のみで判断せずに、深く考えてほしいです。
そう思わないために、今一度観てほしいです。

どういった批判があっても、自分はこの映画に出会えて良かったと思っています。