夜更かしシネマ

映画 聲の形の夜更かしシネマのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.4
「君に 生きるのを手伝ってほしい」

自分のダメな部分を許して、他人の嫌いな部分も受け止められるようになりたい。「死にたい」と思っている人に観てほしい。そんな映画でした。
他人の嫌なところを少しだけでも認めて、受け止めて、前に進んでいこうと思えたなら、×印は自ずとはがれていくのではないでしょうか。

この作品は、「いじめ」「贖罪」がテーマになっているようで、実は「他者とのコミュニケーション」がテーマなのではないかと思います。
水の波紋のシーンが随所に登場しますが、一人一人の想いがその波紋のようにぶつかって複雑な人間模様を形成していく流れが妙にリアルで生々しいです。硝子という耳が聞こえない、うまく話せないキャラクターが軸になっているために、余計に言葉の重さ、痛さが強調されております。

人は無自覚のうちに、他人にレッテルを貼っているものです。
一見、最低な性格の人でも、必ずその性格に至らしめたバックボーンがあり、それを知らずに避難してしまうことは誰しもが経験しているのではないかと思います。Twitterで放送終了後、「川井を許すな」というツイートが多々ありましたが、すまん、この人たちはこの映画で一体何を学んだんだ!(笑)映画鑑賞で性格の悪いキャラと対峙した結果、そのキャラの背景を知らないままに避難し、まさに観衆が自らこの映画の言っていることの裏付けをしてしまうという皮肉(笑)誰でも自分の中に川井さんがいるのです。
ただボーっと見てるだけじゃ「性格悪い」で終わってしまいそうな植野も実は良いところもあって、障害を抱える少女としてではなく、一人の少女、一人のライバルとして硝子と接しているのです。これは「最強のふたり」を彷彿させました。耳が聞こえないことを個性として捉えているんですね。ただ少し不器用なだけなのです。
まあそんなこんなでほんとに一見クズに見えるんだけど実はこんな裏があったよっていうキャラが多いんですね。
そのほか、雨が障害のメタファーになってたり、前半の手持ち花火と後半の花火が対になってたりって言いたいことあるんだけど長くなるのでやめときます!(笑)

監督はアニメ「けいおん!」も手掛けた山田尚子監督。原作からの取捨選択が素晴らしいとのことです。
牛尾憲輔さんによる「補聴器を付けた人が聞く音」を再現した劇中の”音”にも注目です。京アニ特有の逸出した背景美術も健在でした。作品愛が伝わる美しい背景美術に涙が出ました。またいつか、見られることを願っています。本当に「京アニ、ありがとう、ありがとう」という気持ちでいっぱいでございます。
西宮硝子を演じたのは早見沙織さん。めちゃくちゃ熱演で、声の出し方だったり喋り方だったり本当にうまくてその演技にも感動しました。将也の子供時代を演じた松岡茉優さんもよかったです!

ということで色々考えさせられる良い映画でした!
会話だけがコミュニケーションではない。人への想いの伝え方、即ち聲の形はたくさんある。
他者と直接会うことを控えなければいけない今この時代だからこそお勧めしたい一本です。