140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ウィッチの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
3.6
”笑いのないコワすぎ”

説明なしに放り出される時代もいつか不確かで寂しくて救いのない世界。

魔女が恐れられ、信仰心が試されていた時代であるがゆえに、ナ・ホンジン監督の「哭声」のキリスト教への執着と返ってくる無情性を、ある種モキュメンタリー調にコンパクトに纏めていることが返ってツボを的確についてくる。

主演のアーニャ・テイラー・ジョイのイノセントな白い肌と相反するエロスは、この不確かな世界でまたもやダークネスに輝いている。胸元を吸い込まれるように見てしまう背徳感は、いないいないばぁの単純な素朴さとそれが一瞬にして失われる恐怖感と呼応していっそう儚さを増幅させている。

それ以上に弟役の子役の鬼気迫る演技から、真逆に解き放たれる演技の忠実さには度肝を抜かれた。

急な放り出しでの展開に眠気を感じるのかと思った矢先の一瞬先の闇に目が離せなくなり、少しづつ掛け違えていく物語のボタンと侵食されていく現実を、ダークファンタジーとしてはリアル志向にメンタリックホラーにしては象徴的に描くには時間が足りていない印象。しかし細部を描かないことで鑑賞後に記憶が薄れていくとともに感じる”悪夢”を見ていたのではないかという作品の儚さと同ベクトルの幻想性が心地よさと気持ち悪さを胸にこびりつかせた作品である。