ガラムマサラ

ウィッチのガラムマサラのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
3.5
この作品の怖さは想像力にあります。

逆に言えば、直接的にビビらせてくる描写というのはほとんどなく。
一般的なホラーというよりはオカルトに属する類の作品かと。
何より宗教要素の強さが実にオカルトしています。

宗教的な背景で描かれる陰鬱な雰囲気と漂う不気味さ。
家族そろって敬虔なカトリック信者というやつなんでしょう、神への祈りや信仰を大事にしているんです。
でもこの作品においてはその心神深さはむしろ折れれば脆い一本の柱。神が晴れ渡る青空を見せてくれることなんてただの一度もありません。あぁ無情なり。

神を信じているからこそ疑い、自分たちが心神深いと思っているが故の疑心暗鬼。
家族愛以上に神への信仰が優先されているんですかね?もしくは同列?だからなのか、もうとんでもないレベルでギスっています。

もはや狂気のレベル。


直接的にビビらせる演出はないんですが、社会から隔絶された環境下で、それでいてあんなギスギスした雰囲気の家族ですから、木々のざわめき、登場人物の一挙手一投足が想像力を掻き立ててきます。
ただの一度も晴れることのない曇天がさらに「なにかあるんじゃないか」といった恐怖を煽り、そのせいでかわいい動物でおなじみのウサギだってなんか怖い。


BGMと無音、環境音のコントラストが全てを包み込んで人間の孤独と未知への恐怖をずっしりと刺激してくるんですよ。
いやぁ気味が悪い。



欲を言えば一回でいいのでビジュアルでパンチのあるシーンが欲しかったですね。
謎と絶望を孕んだあのラストは嫌いじゃないが好きでもなく。
空気で感じる恐怖は散々味わわせてもらったので、そこにさらに“一目見てヤバイと思える何か”が欲しかったなぁと。