きょーぞー

ウィッチのきょーぞーのレビュー・感想・評価

ウィッチ(2015年製作の映画)
3.0
 おとぎ話の例に漏れず、魔女や悪魔は、あくまでも人間のうまくいかない部分を受け持つための、いわば社会的な役割のようなものだと思っている。
 この映画は、描かれた通り魔女や呪いが実在するという立場か、それともそれらを借りて何かを描こうとしていると捉えるのか、2通りの見方ができると思う。個人的には、後者の方の見方をしてしまった。
 もともと脆弱だった家庭が、森への追放で基本的な生活基盤も失ったせいで、ますます家族の機能不全が加速してしまったのだと思う。
 枠の弱い家庭では、激しいきょうだい葛藤が起こると思う。インセストは時代的な部分を加味したとしても、子どもたちに起こるあれこれ、特にあの双子の様子は、不安定な家庭でよく起こる状況なんだろう。親の目が届かないが故に、誰がどこかで何をした(された)という、いわば足の引っ張り合いが起きてしまう。その根底には、親の愛情を争いあうサバイバル状態に陥ってしまっているということがあったのかもしれない。
 そういう見方をしてみると、抑圧されていた長女が、親きょうだいを象徴的に殺していき、泥沼のようなきょうだい、家族環境から脱する、成長の物語とも読める。魔女って、男性優位の社会に縛られなかった人たちとも言われてるし。
 魔女や呪いという形を借りた、ひとりの少女のお話なのかなぁという気がした。
 ホラー表現が、ぜんぜん空回りしてなくて、地味に気持ち悪いところも素晴らしかった。特に長男の死に際の表現は、単純ではなく、色々とウラを読み取れる、逸品なシーンだった。ただ地味なので、前半は眠気を誘う感じ。
きょーぞー

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