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ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊vsPLA特殊部隊のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

優秀だが麻薬組織の捜査で命令違反を犯した中国軍の狙撃手、レイ・フェンは女子将校シャオユンの判断で特殊部隊「戦狼」に配属される。一方、麻薬組織のアジトに中国軍と警察が踏み込むがボスのミンが雇った元ネイビー・シールズのトム・キャット率いるアメリカ人傭兵団によって阻まれ、皆殺しにされてしまう…。

中国軍vsマフィアの率いる外国人傭兵。
分かりやすく単純な物語とキャラクターはアクション映画の王道。
冒頭からラストまでひたすらテンポ良くノンストップで魅せるミリタリーアクションの佳作なのだが…。

本来なら、ストレスが発散するアクション映画なのだが、どうもスカッとしない。
恐らく2022年の今、ロシアとウクライナが戦争中だからだ。
中国軍vs傭兵軍という構図が、現実の大国ロシアvs助っ人を求めるウクライナの構図に、奇しくも似てしまったのである。

アクション自体は素晴らしいのだが、本作に於いて残念なのは、随所に見られる中国の国威高揚を煽るかのようなプロパガンダ要素だ。
主人公レンが戦狼へ入隊する時、戦車やヘリなど物々しい武装の物量で彼を囲み、見せつけるのがわざとらしい。
いかにも「中国の装備はスゴいだろ!」と、言いたげだ。
厳しい訓練を経て、レンは仲間に認められていくが、弟の復讐を狙うミンが元ネイビー・シールズのアメリカ人傭兵たちを雇い、戦狼と中国軍の演習中のレンを襲撃する。

作戦本部でのサイバー攻撃の応酬やドローンでの偵察、ハイテク機器による3Dの映像を使った作戦会議など、またしても「我が国の技術力はスゴいだろ!」である。
国力を見せびらかすノリは北朝鮮の軍事パレードに近い。
自分の国を持ち上げまくるあたりは、どの国も一緒なのか?

だが、実戦は違う。
戦狼と中国軍は演習用の装備しかなく、碌な応戦もできない。
準備万端で戦略的な少数精鋭の傭兵たちの方が明らかに強い。

潜在的な仮想敵国を悪役に持ってくるのはハリウッド映画も同じだが、中国が敵対視するのが軍事大国アメリカだというのが、物凄く伝わってくる。

とはいえ、武術俳優がミリタリーアクションをするというのが新鮮。
ウー・ジンの無双ぶりは、スポーツマンっぽくて、見ていて気持ち良い。
無線で上官の合図を聞きながら、スナイパーの攻撃を走りながら次々とかわすチームプレイ、倒れた仲間を救うシーンには思わず熱くなる。
地雷を踏んでるのに爆発より早く逃れるシーンは「嘘だろう!」とツッコまずにはいられないが。
クライマックスはライフル、拳銃、ナイフ、最後は蹴り合いと次々と武器を変えるウー・ジンvsスコット・アドキンスの中国vsアメリカ代表戦をこれでもかと拝むことができる。

明らかに「中国は強い!」というプロパガンダ映画だが、説教臭さは少ない。
主人公が基本的に「俺をなめるな」というタイプだからだ。
だが、ラストで隣国に逃げようとするミンを捕まえ、ウー・ジンは国境警備の軍隊に向かって大見栄を切るが、その背後には中国の武装ヘリが…。
「中国をなめるな!」という絵面には苦笑いだ。

この映画と続編で「戦狼外交」という中国の攻撃的な外交スタイルが生まれたそうだ…。
世界一を誇る中国の約14億の国民数を納得させるには、このくらい単純なメッセージの方が良いのだろう。
しかし、戦争に対して、批判や反対、反省の色が見られないのが、本作の最大の難点。
戦争礼賛、軍備礼賛に見える人もいるだろう。

だが、なぜだろう?
中国が強さをアピールする、その真っ直ぐさが個人的には少し羨ましいと思える。
多分、日米安保条約によって、アメリカの言いなりになっている日本の政治への不満からだろう。
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