アニマル泉

私の名前はジュリア・ロスのアニマル泉のレビュー・感想・評価

私の名前はジュリア・ロス(1945年製作の映画)
5.0
ジョセフ・H・ルイスの出世作。冒頭はロンドンの大雨だ。ずぶ濡れのニナ・フォックがアパートに駆け込む。掃除婦ジョイ・ハリントンに嫌味を言われてなかなか顔が見えない。元恋人ローランド・ヴァードの結婚式の招待状を開ける場面でやっと登場になる。ルイスは低予算で効率良く撮るためにカット数を少なくする腕が長けている。アパートの廊下の場面もなるべく縦構図の長回しで押して、ドンデンに入っての切返しは封じている。
ルイスの「火」の主題は暖炉の火だ。そして「水」の主題は幽閉される邸宅があるコーンウェルの海へ展開される。枠ごしのショットが多用される。フォックの部屋の窓には格子がつけられてしまう。ルイスが得意の横トラックで「ごし」のカチっとした構図に決まるショットは、メイ・ウィッティとマザコン息子のジョージ・マクレディの会話を盗み聞きしたフォックが薬棚に毒薬を探す場面でバッチリ決まる。マクレディにメモを見破られる、階段上の絶望のフォックごしのマクレディのワンカットもルイスらしい見事なショットだ。フォックが牧師たちの車に隠れて脱出しようとして失敗する場面、追ってくるマクレディの車とフォックが隠れている車が交差するのが面白い。「階段」も不気味だ。とんな展開をするのか期待していたらなんとマクレディは階段の板を外してフォックを墜落死させようとする!唖然となる展開だ。こんな階段の使い方は見たことがない。深夜の寝室の「鏡」に映る目。恐怖に駆られたフォックは思わず鏡を叩き割る。黒猫が活躍する。大家のおばさんドリス・ロイドが思わぬ大活躍をする。壁に落ちる斡旋所の名前の影が印象的だ。クライマックスは「海」だ。ルイスは「海」が素晴らしい。狙撃されたマクレディが海に前のめりに倒れるのが壮絶だ。ラストのプロポーズ、「答えは5秒」と言われてキスでエンド、洒落ている。コロンビア。
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