ちろる

エデン、その後のちろるのレビュー・感想・評価

エデン、その後(1970年製作の映画)
4.0
これは淫靡で残酷なアート幻想譚。
モンドリアンの迷路のようなカフェ・エデンで、怠惰と憂鬱な空気の中で学生たちはSM儀式や殺人遊びを空虚な演技を繰り返す。

ある日1人の謎の男デュシュマンの登場によりエデンの中は一転する。
彼の与えるアフリカの魔法の粉。
少しの緊張感の中に死んだ魚のようだった若者たちの目には好奇心光が宿り、迷わずヴィオレットは、刺激を求めてその粉を舐め、混沌の世界へと誘われて行くのだ。

パイプに囲われた工事現場。
視界を塞ぐ霧。
そして無造作にぶら下がったチェーン。
不穏なピアノの調べと消えた仲間たち。
そして男の死体。
それと檻の中の女たち。

ストーリーはほぼ、断片的なイメージによって作り出され、論理的説明は皆無。
ルイス ブニュエルとダリの「アンダルシアの犬」を思い出すような、イマジネイティヴな実験的映像で精神世界に私たちを取り込んでいく。

確実に非日常の中に堕ちていくヴィオレットがそれでも明け方に大学の講義に遅れてしまうと心配するその感覚が違和感で少し笑ってしまうのだけど、彼女の目眩く幻想の世界は止まらない。

消えたデュシュマンを探しに訪れるチュニジアのの真っ白い箱家と青いドアや、白い岩と砂浜にクリアな青い海のコントラスト。
そこに異質なまでに挿入される真っ赤な血液や目隠しの残酷な描写が、ヴィオレッタの内面世界へと移行すると、カフェエデンで見た悪夢の答え合わせのように挿入されていく。

暴力と憂鬱、混沌をエンドレス繰り返しながら、なんだかもう一度カフェエデンの悪夢の入り口に取り込まれてみたい気持ちになる。
あぁ、すごいトリップ映像体験。
変態でした。
ちろる

ちろる