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ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘いのayのレビュー・感想・評価

3.5
2013-14年にウクライナ・キエフで起きた市民革命の現実の記録。当時の親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領が密かにロシアとの関係を強化、EU協定の約束を反故に。それに対するウクライナはヨーロッパの一部と主張する学生中心の平和的な抗議が、やがて市民と警察(ベルクト)の戦闘的対立に発展。

警察の直接暴力が生々しくて目を疑った。びっくりして途中何度か映像を止めた。市民の味方じゃない。警察一人ひとりはふつうの青年にしかみえなくて。ふつうの人たちが権力を信じこむことでそれに見合うふるまいをするのが1番恐ろしかった。
最初は抵抗少なだった市民側も、悪法の反デモ法が成立して怒りに呑みこまれ暴動へ。結局、市民の死者125人の惨事に。怒りの対象を市民VS警察のわかりやすい対立にスライドさせ、争い全体を操作していた人たちが、別のところにいたはずなのに。歪んだ権力バランス。

ロシア側の軍備増強で緊迫する、ウクライナ情勢について知りたくてみた。そもそもウクライナは1991年にソ連から独立していて、プーチン大統領は、ロシアとウクライナはひとつの民族と主張。ロシアとの深い関係とEUやNATOと手を切る要求を、ウクライナに繰り返してきた。2022年1月現在の事態が突発的なものでないこと、ウクライナ側でロシア併合の議論は盛りあがらない事情、ウクライナの人たちのロシアに対する率直な感情などが知れてよかった。

2022.3.16追記
ベルクトは警察というより、"旧ソ連特殊部隊を前身とするウクライナの特殊部隊で、「イヌワシ」の意。反戦デモの鎮圧にあたっていた。形式上の解散・引き揚げをした後、旧ベルクト員はロシア警察の指揮下に置かれ、再度ウクライナに派遣された"(ウクライナとロシアの未来──2022年のあとに|ミハイル・シーシキン/奈倉有里訳)らしい。あと、結局2月に始まった今回の戦争が進むにつれ、本ドキュメンタリーもまたひとつの主張の側に立ったもので、特に暴徒化の経緯について構成に欠けたピースもあると知り、不均衡はあらゆる創作の宿命とはいえますます何もいえなくなる…
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