雷電五郎

スノーマン 雪闇の殺人鬼の雷電五郎のレビュー・感想・評価

スノーマン 雪闇の殺人鬼(2017年製作の映画)
3.2
冬のノルウェーという白い景色の中で起こる凄惨な殺人事件を一人の刑事が追いかけてゆくサスペンス。
シチュエーションや人間関係、事件背景にある政治的思惑などなど、素晴らしい構成なんですけど多分これ、説明が足りないという一点に置いて見る人によっては意味不明な話になってしまっているのが、とても惜しいと思います。
個人的には非常に好きな内容と雰囲気なんですが…

犯人の動機と雪だるまについて、つまりは自分を見捨てた母親への復讐の代替行為ですよね。あのような僻地で同年代の友達もおらず、父親にも認知されていない子供が一人でできる遊びなど極限られています。まして、あの大雪では雪だるま作りがせいぜいでしょう。
雪だるまは犯人の孤独な子供時代の象徴であると同時に、自分の存在を他者に認知してほしいとい後ろ渇望の片鱗にも思えます。

また、オリンピック招致という大きなイベントと、オスロでは殺人事件が滅多にないという前半の発言から、警察が事件を緻密に調査せず、簡単に自殺で片付けて「殺人事件が滅多に起きない」という状況を作り上げているため、ハリーがいかに煙たがられているかも窺えます。

作中、確かに警官達は手持ち無沙汰な様子が度々描写されており、犯罪の多い街や国とは緊張感の在り方すら違う。
それらの要因が重なり、過去の事件と現在の事件を関連づけることさえできない無能さが結局、ラフトーの死に繋がり、彼の娘に私情調査をさせる遠因にもなっている。

犯人はハリーに理想の父親像を見て、その理想が間違っていたことを知りハリーに目をつけたのでしょうが、逆にハリーが理想の父親であることを望んでいたのかもしれないという話でした。

ラストは少々淡白でしたが、雪国らしい確実に人が死ぬだろう死に方で、極寒の地では自然こそが脅威だなぁと思いました。

雰囲気やシチュエーションが好きですが、肉づけの物足りなさも確かにあり、惜しいというのが率直な感想です。

しかし、日本人としては、道路や家があんな作りで大丈夫なんだろうか…と心配になる建築物が多くてオシャレなんだけど地震があったらひとたまりもなさそうという気持ちが至る所で湧きました。
道路あんなに空中に浮かせた構造で大丈夫なのかな?とか、余計な心配ですね(笑)
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