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天使の影のsonozyのレビュー・感想・評価

天使の影(1976年製作の映画)
4.0
1975年に上演され“反ユダヤ的である”と大炎上したというR.W.ファスビンダー脚本による戯曲『ゴミ、都市そして死』をダニエル・シュミットが映画化。
7月にBunkamuraで特集上映されますね。

ギャンブルしか能のないヒモのラウル(ファスビンダー)を愛する娼婦リリー(イングリット・カーフェン)。
街で並ぶ仲間の娼婦(イルム・ヘルマン含む)が客を取る中、華奢な体と幸薄な雰囲気だからか、寒い中、なかなか客を捕まえられず、咳も悪化しつつ家に戻るも、ラウルから稼いでこいと再び路上に出されてしまう。

だが、ある日、部下を連れた“裕福なユダヤ人(クラウス・レーヴィチュ ※作中で名前は出てこないので仮にA氏)”がリリーを気に入り、大金をくれるようになる。
彼は不動産投機で稼ぎ、市長や警察にも顔が利くような男。
ラウルは、何をしたらこんな大金を?そいつのナニはデカいのか?(笑)的に嫉妬するような態度で荒れるが、A氏はリリーの身体が目的ではなく、彼の話の理想的な聞き手のようなのだ。

A氏によりリリーの生活は大きく変化していく。
そして、変わったリリーの両親も登場。父は女装しDrag Queen的にステージに立ち、母は車椅子生活。
この二人のファシスト的なキャラと、ユダヤ人A氏の過去との関係。
ゲイのラウルはリリーと暮らしていた家を出る・・・
などが交錯していくお話。

ダニエル・シュミットならではの妖しげな映像も見た画質がイマイチ、原作が戯曲の多めのセリフも印象深いですが英語字幕では理解不十分で、改めて見直したい感じです。

唐突に挿入されるラテンテイストの音楽も良かった。
こんな曲とか。
Spiel noch einmal für mich, Habanero(Caterine Valente)
https://youtu.be/CJcGJjg4DPM

※余談
ファスビンダーとイングリット・カーフェンは、1970-72の2年間だけ結婚していたんですね。
原作の戯曲『ゴミ、都市そして死』は邦訳版も出ていて古本や図書館でアクセスできるようです。
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