たまたま読んでいた「国境なき医師団」についての本の内容ともリンクして、とても響いた一本。
舞台は紛争直後の混乱真っ只中のバルカン半島。清潔な水を確保するため井戸の水を浄化しようとしているNGO。地雷や銃など命の危険はそこらじゅうにある。直前まで軽口を叩いていたチームが瞬時に真顔になりシリアスな対応をするときの、その落差。現地の厳しい現実にはっと向き合わされる。
現地で本当に必要とされるものは何なのか。よそ者が入って現地の支援をすることの抱える根源的な問題。支援者のエゴ。無駄に終わる多くの努力。ほんの些細なことを解決するために立ちはだかる何重にも重なる壁。
そして、そもそもとして、支援している彼らにも人生があり(あるべきであり)、現地にいつまでもいられるわけではないこと。支援も無料ではないこと。
映画一本まるまる使って彼らが奔走した問題は、ラスト、雨のおかげであっけなく解決する。もしかしたら現地の人はあの井戸がいつも雨で溢れることを知っていたかもしれない。そもそも支援は最初から無駄だったのかもしれない。
ただし、彼らのかけたロープは、ほんの少しだけ、現地の人の作業の助けになった。
支援ってそういうこと(結局は現地のやり方で解決するための小さな手助けをすることしかできない)なのだ、と言われたようだった。
人道支援は、世界中の紛争地、被災地、難民キャンプ、スラム街などで行われていて、舞台はたぶんどこでもよかったのだと思う。
人が人を助けようとすることの難しさ、矛盾のようなものを描こうとした映画。