柊

ロープ/戦場の生命線の柊のレビュー・感想・評価

ロープ/戦場の生命線(2015年製作の映画)
4.2
邦題のタイトルが「ロープ」確かにわかりやすいけど、原題のままの方でよかったのにと思った。
バルカン半島のボスニア内紛の停戦後が舞台。いくら停戦合意がされたとは言え、現地では、はい今日で戦争は終わりです。これから人を殺したら殺人ですよ。何て言われても指示が徹底されるには時間も必要でしょう。と言うわけでまだまだ戦時下と変わらぬ日々を送る現地。実際に銃弾が飛び交い爆弾が炸裂するようなシーンはないが、井戸に死体が投げ込まれるは、牛の死体は地雷のトラップだわと危険だらけ。そんな状況でも国際ボランティアの国境無き水の〜メンバーは自分達の役割を全うするためにただひたすら突き進む。事態は決して楽観できない重い状況なのに、随所に繰り出されるブラックジョークとノリのいい音楽で深刻さがどこかへ行ってしまうくらいだ。…がやっぱり現実は厳しい。特にニコラにまつわる全ての話には厳しさしか感じない。これが戦争なんだと思い知らされる。そしてようやく死体を引き上げられそうになるところで、国連軍が介入してご破算になってしまうくだりは、こんなところで理詰めでこられても誰の為にも役立っていないのに、何だよ〜と怒りがこみ上げてくる。これこそお役所仕事の極み。
あんなに探し回ったロープも結局は意味がなく、最後は自然の力で解決する所が、何か国境無き水〜の人達の努力が報われなくて…結果オーライ的。誰が解決しようと解決すればそれが一番なんですけどね。求められるがままに次の現場に向かっていくメンバーが逞しくもあり、切なくもあった。
ベニチオ・デル・トロものすごくいい。さらに久しぶりに見たティム・ロビンス最高!紛争地帯の現実をコメディ映画のように撮った監督面白いと思います。作り物感があまり感じなかったのは、やっぱりドキュメンタリーを得意とする監督故なのかな。今後の作品にも期待が高まる。
柊