FukiIkeda

バース・オブ・ネイションのFukiIkedaのレビュー・感想・評価

バース・オブ・ネイション(2016年製作の映画)
3.5
アメリカの黒人奴隷 ナット・ターナーが作った、後の南北戦争のきっかけ。
比較的寛容な白人主人に雇われた両親の元で育ち、字が読めるという事で、特別な子として主人の奥様に宣教師になるべく教育され途中まで育ったターナー。一緒に育ち、仲良く遊んでいた主人の息子サミュエルに仕える奴隷となった。
メルギブソン監督のパッションと同じタイミングで観た為、聖書の同じ福音が引用されていて、今まで生きてきて自分の中での人間のテーマにも繋がるフレーズな為、ちょっと震えた。

人間は弱く、過ちは起こす生き物だし、全ての人にとって正しく幸せと感じる社会はなかなか難しいもので。
正義の為の戦いを容認してしまったら、殆どの戦争を容認する事になる。
勿論、そもそも奴隷制は容認されるべきではないし、主人公が利用された苦しみ、当たり前のように見てきた苦しみは計り知れないだろう。
とはいえ、聖書の一節を都合のいいように読みとった彼らと、現代で憲法を都合のいいように解釈する人達がどこか重なって、自分の中では釈然としないモヤモヤした何かを抱えながら観た。
どちらも人間の弱さがもたらした過ちで、サミュエルはそこまでの罰を受けなければならなかったのか、と。

「赦し」ではなく、「剣を抜く」という手段しかなかった彼らがいて、歴史はそうやって動き、いずれ南北戦争の火種にはなっているから、今があって、賞賛されるものにはなっているけれど、血を流さなければ、誰かの犠牲の上にしかない自由は、哀しくて哀しくてやりきれない。

しかしながら、残酷だけど美しい画でした…。
とんでもなく哀しいシーンが美しくて…
FukiIkeda

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