そうちょ

シング・ストリート 未来へのうたのそうちょのレビュー・感想・評価

4.0
見終わった瞬間にポツリと一言。
「あ、いい」

どこか影のある少年がバンドを組むという在り来たりな青春ストーリーのはずなのに、飽きることなく自然と最後まで見てしまった。
不思議な魅力がある映画だと思う。

この映画をこんなに魅力的なものにしている要因は、やはり音楽だろう。
劇中に流れる全ての曲が素敵で、それを聴けただけでも満足できる。

心理描写が細かいわけではなく、難しい音楽の話を熱く語るわけでもない。
主人公やヒロイン、その他の登場人物が劇的な活躍をするわけでもない。
内容的にはとても淡白なものだ。

しかし、曲が流れると世界が変わる。
ミュージカルのように何かを強く描写しているわけでもないし、特別な演出があるわけでもない。
けれど、彼らが歌えば、この映画は息をする。

そして、この映画にとってもう一つ欠かせないもの。
それは、主人公の兄だ。
兄弟とは、時に重石である。
煩わしくて、面倒で、投げ出したくもなる。
でも、それでも、たとえどんなに負の感情を持とうとも、ちゃんと愛おしい。
そんな些細な兄弟愛がひっそりと描かれているところが素晴らしいと思った。