140字プロレス鶴見辰吾ジラ

傷物語II 熱血篇の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

傷物語II 熱血篇(2016年製作の映画)
3.2
もうとっくに好きにしておろうが…

傷物語:熱血編は前作鉄血編の未知との遭遇と日時の侵食というあくまでの導入措置。エピソード2にあたる熱血編は冒頭からバトル描写での引きつけ。特にゲリラ豪雨描写、向かい合う本作の主人公アララギとドラマツルギー、カット変わって蛇口とバケツから溢れる水の描写のアニメ的絵とそれを意図してはみ立たせる演出に瞬発的にスクリーン内の世界に踏み込まされる。覚悟はいいか?そんな風に。

鉄血編に比べると文字通り”熱血”である。vsというバトルモノの定型詞でなく実際始まる映画という大嘘に似つかわしいバトルだけでなく、エモーショナルな感情へのコンタクトが”熱血”的である。

バトル描写以上にエモーショナルな部分にコンタクトを仕掛けてくるのは、今シリーズ最大のファムファタール羽川翼。TVシリーズから増量された胸部のアニメ的外連味を揺らすし我々の感情を揺さぶる姿は制服、メガネ、お下げ髪の第一形態。鉄血編からアララギと心を通わせるように距離をより離し近づけ、ひとつにならんとする駆け引きが心地良い。甘く華奢な彼女の声を担当する堀江由衣のファムファタール性にも大いに注目できる。

メインストーリーはあくまでキスショットの四肢を取り返すバトルモノであるのだが、同時進行するサブストーリーのアララギ×羽川翼の甘美な接触が何より心地良い。復活のときを待ちわびながら成長を物理的に表すキスショットの大人への身体つきの変化と華麗なバレエステップも程よくエモーション。

結局はメインストーリーよりもサブストーリーがショーをスティールしている構図に見えるが、スターウォーズのファントムメナス的に、TVシリーズを体感した観客側にとっては、真に熱血編たる意味合いのエモーショナルであり人の体温が伝わる羽川翼の魅力が感情流動の主軸になっていることに他ならない。

ロマンスとバイオレンスと製作者側の意図的なスカしの演出は「好きなようにしている」という魅力的かつ悪趣味で放課後の駄話的な乖離させるようなカットインも含め結局今シリーズの味なのだと飲み込まされてしまうのであった。

つまるところ斜に構えてニヒルなボーイ・ミーツ・ガールでありガール・ミーツ・ボーイを怪異というスパイスで味付けしてセッションさせたパルブフィクションであると思う。だからこそ今作では羽川翼のエモーションな立ち振る舞いと観客側の脳へのコンタクトが魅力的で甘美であるほど作品の強度が増してしまうマジックのようなモノなのだと思ってしまった。

回転血飛沫含め回るカットへの楽しさや悪趣味含めシリーズはちゃんと見切る約束のもと見るべき作品だと思う。


羽川翼可愛いな〜


和製スーサイドスクワッド
柳楽優弥(デストラクションベイビーズ)
菅田将暉(ピンクとグレー)
香川照之(クリーピー)
松岡茉優(ちはやふる)
綾野剛(日悪)
三浦友和(葛城事件)
市川実日子(シンゴジラ)
声の出演:堀江由衣(傷物語)

堀江由衣はここ10年の女性声優の中でその声に不老不死性というか、全盛期がいつなのか?どの時代が一番なのか?謎を秘めるトップランナーだとつくづく思う。