踊る猫

ダゲレオタイプの女の踊る猫のレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
3.9
アンドレイ・タルコフスキーにも似た境地を感じさせる。悪く言えば退屈なスローテンポの映画なのだけれど、そこは黒沢清氏だけあって幽霊の女性たちの美しさ、迫り来る彼女たちのじわじわと来る存在感の凄味に依ってこちらを圧倒させる。海外で撮られた作品だからなのかドメスティックな作品を観慣れた目には俳優陣の演技の巧拙が分からず、例えば香川照之氏や西島秀俊氏や役所広司氏を観るような形では作品に入り込めなかった。これは私の側の宿題とさせて貰って良いのかもしれない。やや『カリスマ』を思わせるところもあり。黒沢清作品の女性はしかし(近年の作品は例外に属すると思うのだけれど)、どうしてファム・ファタールな佇まいを以てこちらに迫り出して来るのだろうか。女性の描き方が下手と言ってしまえばそれまでなのだけれど、それを超えたエロスの欠片もない女性の神秘的/崇高な佇まいはなかなか興味深く感じられる。
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