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kouの感想・レビュー

2017/03/20
グリーンルーム(2015年製作の映画)
4.5
《パンクスになる瞬間》
とにかく緊張感があり、常にその先を読めない展開を楽しめた。ハラハラし、敵の存在に恐怖し、そして最後の見せ場もあり、映画を観ながら常にドキドキする感じがジェットコースターのようで素晴らしかった。パンクの精神を映画に込めたような作品だった。

パンクバンドの「エイントライツ」は久々にライブハウスでの公演の依頼が来る。そのライブハウスはネオ・ナチの巣窟で、そこで一体の死体を見つけてしまうというストーリー。まず、今作のバイオレンス描写の痛々しさ。傷口を見せるのだが、その傷口がやけにリアル。これだけで観ている側もここはヤバイ所だと一緒に怯える。また、容赦のない暴力性だけでなく、敵も理論的で頭がいいというところがまた恐怖だ。異常者ではあるのだが、頭のいいボスと、それに命まで投げ出すような凶暴な奴らという組み合わせが恐ろしい。

この話の根底にあるのがパンクスとネオ・ナチとの対立である。基本的に相容れない両者には音楽という部分だけでなく思想的に違いがある。パンクは何か規範や権力に対して怒り、戦う音楽だ。しかし、彼らは音楽的にはパンクをやっているが、根本には臆病で理性のある普通の青年たちだ。それはこの映画で何度か語られる、「無人島に持っていくならどのアーティスト?」という問にも現れている。序盤のラジオの収録では彼らはパンクバンドを上げるが、窮地に陥った時、彼らはプリンスなどを上げる。彼らは思想までごりごりの戦うパンクスではないことがわかる。

しかし、彼らは自分達に向けられた暴力に対して行動を起こさなくてはならなくなるのである。理不尽にも死に直面する。敵は凶暴で戦い慣れしている。そんな場面で彼らが戦いに向かう決意をするのだ。この場面がとてもエモーショナルだ。決して自発的ではないが、彼らはパンクスになる。力に屈すること無く、勢いで。すばらしかった。

暴力的な描写のある緊張感のある映画だが、密室物としての面白さ、そして何よりパンク精神を映画に込められた素晴らしい映画だったと思う。とても面白かった。