ふしみあい

グリーンルームのふしみあいのレビュー・感想・評価

グリーンルーム(2015年製作の映画)
5.0
”グリーン”ルームというタイトルで、画面がずっと緑がかっている。撮影がすごく格好いい。

アントン・イェルチンの子犬のような不安げな目がまたこちらをハラハラさせる。あとほんと痛そうだな君。
ライブ会場が実はネオナチ軍団の巣窟で、そこで起きた殺人を出演していた主人公たちのバンドがたまたま目撃してしまったために、グリーンルーム(楽屋)を中心に、統制のとれたネオナチ軍団VSインディーズパンクバンドという構図にはまっていく…。

最初は閉じ込められたと思っていたグリーンルームを後半だんだん戦略的撤退に使うようになるのが面白い。
どちらのグループも割とあたふたしているところがリアル。ネオナチ軍団も統制取れてるとはいえ、結構鈍臭い。見た目はスキンヘッドで超怖いけど。

また何と言っても特殊メイクでがっつり見せてくるゴア描写。ぱっくり、ざっくり、ぐちゃぐちゃ、グロいけれど汚さとかはない。むしろ上品ですらある。緩急というより緩2急8ぐらいの割合で敵も味方も一人また一人と人数を削りあっていく。吹っ切れた主人公の表情やセリフや動きがすごい。アントン・イェルチン…!!

パンクバンドのメンバーもネオナチ軍団も個性豊か。叩きつけるような激しいドラム演奏で腕がガッチガチのドラマー、その腕の筋力を生かして活躍する。
バンドの紅一点の女の子は無理〜〜〜!!とかいう割に結構攻撃力が高い。
ボーカルの子は頑張ってた、頑張ってたよ…

パンクの反骨精神というか、追い詰められてからの反撃に出るところからのテンポ感が凄まじい。本当に一気加勢とばかりにあっという間にワンシチュエーションは終わらせられる。
日本人の私にはパッと観てネオナチがどうとかいうのはわからなかったけど、とりあえずスキンヘッド+MA-1+編み上げブーツのおっさんはヤバイということがわかった。パトリック・スチュワートまじ怖い。天然スキンヘッドはただのスキンヘッドよりも格上ということも学んだ。

なんだかんだすごく面白い映画だった。めちゃくちゃタイトにまとめられてるし、見せたいところは見せるということが徹底されていたように思う。加えて色彩と美術と撮影がカッコ良いので、ゴア描写も多い映画なのに綺麗と感じる瞬間がいっぱいあった。肝心のゴア描写も容赦なくて好きだった。

真面目なモヒカンくんが最後も真面目に家で掃除機をかけてるカットが出てきてそういう細かい部分に愛おしさを感じた。キャラが敵味方含めてみんな良かった。犬もかわいげがあって、ドントブリーズの犬と飼うとしたらどっちと聞かれたら迷わずこっちを選びたいとこだけど、餌が特殊だった…。どっちも無理だ…。