紅蓮亭血飛沫

グリーンルームの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

グリーンルーム(2015年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

「もし無人島に“1つのバンドのCD”しか持って行けないとしたら、どのバンドを選ぶ?」

私は“女王蜂”ですかね。
でも“THE ORAL CIGARETTES”や“マキシマムザホルモン”もいいなぁ・・・。
うーん・・・選べません(こう言っておけば私も生き残れるかな?)。


ライブハウス等を転々としながら活動するも、戦績は思うように振るわない日々が続くパンクバンド“エイント・ライツ”。
知り合いのツテでライブハウスの出演権利を受け取り、その場所へと赴くも、そこはネオナチ(簡単に言えばナチス信仰者)軍団の溜まり場だった・・・。
そんな真相を露とも知らず必死にライブに励む主人公達だが、不幸な事に演奏した曲がよりにもよって「ナチスのクソッタレ共め!」というナチスへの強烈なヘイト・ディスり曲だったものだからさぁ大変。
瞬く間に観客達の怒りを買い、殺伐としたライブになってしまいました。
なんとか無事に演奏を終え、報酬をもらったらとっとと立ち去ろうとするメンバー達。
しかしメンバーの一人が楽屋に忘れ物をしてしまったため、踵を返し楽屋に戻ると、頭部にナイフを刺されて倒れ伏している女性と、その犯人がいたものだからもう人生最悪の日。
携帯電話を没収されるだけでなく、その楽屋に閉じ込められ、このライブハウスのボスでありネオナチ軍団のリーダーは「目撃者は全員殺せ」と部下達に命じるわで正に死を覚悟する絶望的状況。
エイント・ライツの命運やいかに・・・。


まずオープニング・アバンなのですが、これがもう掴みバッチリです。
ライブハウスを転々とする生活を送る売れないバンドが、単なる居眠り運転でそのまま畑に突っ込んでしまうも、メンバーはそのまま寝落ち。
特に驚いたり感情を露にするわけでもなく、朝が来たら淡々と起き上がる。
しかもそのまま何食わぬ顔で他人の車からガソリンを奪ったりするものですから、開始早々主人公達の人間性・人生を歩む上でのドライさが垣間見えるのが嬉しいです。
瞬く間に主人公達の人間性が把握出来るので、先の展開にも期待が高まりますね。

ネオナチ軍団とは思いもせず、「くたばれナチス共!!」をテーマにした曲を爆発させるライブシーンも格別です。
本人達からすれば悪気はないわけですし、ただただ“運が悪い”としか言いようがないこの状況のシュールさからなるコメディシーンへと着手出来ていますね。

ネオナチ軍団のボスによる“警察への連絡はするが、工作員にデマをでっち上げさせて真実を隠蔽させる”機転や、楽屋に閉じ込められた主人公達を誘い込む交渉といった、大袈裟に行動は起こさずとも確かに存在する脅威としての描き方もいい味が出ていました。
演じたキャストがX-MENでプロフェッサーXを演じたパトリック・スチュワートである、というのも中々に興味を惹かれます。

面白い設定が光っているのですが、結局ネオナチ軍団の特色を生かせていなかったり、監禁状態からの心理戦・頭脳戦に持ち込むわけでもなかったり、脱出出来た際のネオナチ軍団の少なさ等、期待していた分、ご都合主義ともいえる展開が目立っていたのが残念・・・。
犬を用いた被害者の惨状、死んだかどうかを確認するためにナイフで腹を切るといった、グロ・ゴア描写に力が入っていたのは嬉しかったですが、肝心のストーリー構成がほぼ主人公達によるゴリ押し且つ結構間抜けなネオナチ軍団だったという要素が重なって切り抜けられちゃった、という落とし所だったので個人的にはピンと来ませんでした。

テンポも良く、全編に渡って軽快に鑑賞出来る一方でその分、ストーリー構成が雑というか勢い任せになっちゃってるのが勿体無い。
グリーンルーム=楽屋という点を生かし、楽屋という限定された場所に監禁されているからこその策を巡らせる駆け引きが見たかった・・・。
相手がネオナチというヤバい軍団な一方、こちらはただの売れなくて冴えないパンクバンド。
だからこそ武力ではなく策を持ってこの場を切り抜ける、というのがこの手の醍醐味だとも思いますので、ちょっと残念。