Habby中野

世界のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

世界(2004年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「北京から出ないで世界を回ろう」
大都市北京の中の、小さな「世界」。
そこに見えるのは、驚くほど狭く矮小な人間たち。どんなにこの世が広くとも、見ることのできるのは、自分と関わりのある、自分の中にあるものだけだ。
北京から出て行く者たち。彼らには世界はもしかしたら広く感じられるかもしれない。しかし、北京から一歩も出ない人間の世界は、生活でしかない。関係に縛られ、秩序に締め付けられ、狭い世界で「世界」を演じる。控え室は狭い地下にある。
そこにいる人々の目にはもはやピラミッドもビッグベンもハリボテでしかなく、一番高いエッフェル塔から見渡せるのは、たった北京の一景でしかない。世界とは、どう足掻いても、世界を思う自分でしかない。
なぜかずっと曇りのように暗く全てに距離のある画面はいつも狭く、主人公はショウでは華やかを演じても、実際は暗く、服もあまりに地味でダサい。流れる音楽は伝統のものに電子音を混ぜ込み馴染まない異質な混沌としたもので、時折挟まれるまるで無意味のアニメーションも登場する人々の目も行動も生活も、どれもが暗く苦しく狭い。
それは作者の思いとか本音というよりも、そのまま自分たちの今の状況そのものがただ表出しているだけのように思える。あらゆる空想性とその破壊がリアルだ。
Habby中野

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