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不滅の女のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

不滅の女(1963年製作の映画)
4.0
奇しくもトルコが舞台の映画でした。お悔やみを申し上げます。一刻も早い救助と支援が届きますように。
                        🌷🌷
アラン・ロブ=グリエ2作目。皆目わからなかったけれど、こういう詩的な妄想は好み。イスタンブールで魔性の女に出逢った赴任したばかりの教師。陽炎のように触れることも近づくこともできない。質問してもその場しのぎにでたらめに交わされる。ギリシャ語とトルコ語のわかる女は街人と話すが、教師は蚊帳の外。

場面が次々切り替わり、時系列がシャッフルしているみたい。男の記憶がフラッシュバックしているだけにもみえる。すでに彼女は死者なのではないか。スルタンの元に連れて来られ囚われていた女たちの亡霊だったかもしれない。

コーランの響くイスタンブールのモスクや廃墟にバザール、カラーで観たいと思ったが、水中に沈んだ遺跡の回廊を小舟で進むモノクロの陰影にぞくぞくした。なめらかな水面の波紋と白い柱。倒れかかる墓標の男性的シンボル。闘う男たちと征服されてもたおやかに「その日」を待つ女たち。

光が眩しすぎて探しているものが見えなくなる。陰は遺跡に隠れて見えなくなる。

なぜその女が男の前に現れたのかを考えても、姿形が変わっていき消えてはまた現れ、考えることをやめたくなる。女の怨念の高ぶりにもみえる。

悠久の歴史ある国での記憶の旅。
久保田早紀の歌詞が近くて驚いた。

イスタンブールにひそむ魔物にいざなわれ
異邦人として彷徨う男。
長い歴史に造られてきた女。

この街で紡がれる詩は同じテーマを言葉を変えて幾世代も言い伝えられている。
詩の形式を映像に置き換えて表現した実験的な作品。

イスタンブールの陰影に魅了され、とても心地よかった。
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