Jeffrey

不滅の女のJeffreyのレビュー・感想・評価

不滅の女(1963年製作の映画)
4.5
‪「不滅の女」‬

もーね、待ちくたびれたにも程がある…遂にアラン・ロブ=グリエの傑作集がBD BOXで2ヶ月連続発売する。今月は不滅の女、ヨーロッパ横断特急、嘘をつく男が収録された箱が届く。去年の夏だったか単館で上映され一向に発売情報が無く焦った…良かった。これでヌーヴォー・ロマン派の映画を初見できる…。さぁ〜先月に続き「アラン・ロブ=グリエ」のBD BOX IIが紀伊国屋から発売された。収録作品は「快楽の漸進的横滑り」と「エデン、その後」と「Nは骰子を振った…」と「囚われの美女」の4作品だ。何一つ観たことがない彼の初カラー作品からエロスと幻想交えた問題作から実験的作風まで一挙に鑑賞するぜ。

‪冒頭、イスタンブールで休暇を楽しむ男。

中東の民族音楽と共に歌声が聞こえ、原風景と壊れた建築物がモノクロームで映される。次のショットでは女性のクローズアップ、画面はフェイドアウトし窓の隙間から男が何かを眺める。車事故、モスク、船旅。今、異国の地でバカンスが始まる…

本作はアラン・ロブ=グリエの監督デビュー作で、この度BD買って初見したが素晴らしい物ばかりだ。

デビュー作でこのクオリティーはさすがに凄すぎる。夏季の風光明媚な土地が何とも光輝。

冒頭からかなりインパクトを残す画作りで、とてつもなく大好きな映画だ。これは傑作としか言いようがない…何度もカット割があり、女の断末魔や犬の叫び声、船の汽笛音など様々な音で聴覚を狂わせる。メトロノームの音、波打つ音。

ただ女が建物の中にドレスアップで入るだけでなんでこうも神秘的で美しく見えてしまうんだ。

室内の窓ガラスから海を眺める描写や音を立てて出航する船、また船の上での女性を写したショット、モスクや海峡の画。トルコはもともと地政学的にも重要な場所に位置していると言う事は知っていたが、このイスタンブールと言う土地柄は非常に美しく栄えていて、観光スポットには抜群である。

また妖艶な雰囲気を醸し出す楽器の音色と共に女性の顔を男が手のひらで撫で始め、徐々に服を脱がしていくシークエンスが不意に浜辺に移り変わったりモスクの外へ変わったりと印象的だ。

妖艶と言えばベリーダンスする女性もとてつもなくセクシーである。

冒頭からそうであるが流れるカメラワークが特徴的で終始会話の間にフレーム外から音や話し声が聞こえるような演出をしている。

一瞬真っ白な広場で人々が立ち止まる場面があるのだがすごく前衛的だ。

とにもかくにも虚無感があり、厭世的な雰囲気に満ちた画面構造やこの小宇宙的な佇まいが個人的には最高だ。やはり古びた建物が連なる街並みをロングショットで映したり、階段ショットやローアングルからの捉え方等とても味がある。

ビザンチウムの城壁がシンボリックに映された1本だ。

この映画を観てトルコに旅行しに行きたくなった。

さて、物語は少しばかり複雑で謎めいた登場人物やもはや脱線しまくる話で連なっている。まず主人公は教師の男性、続いてその男性が港で出会った謎めいた女、サングラスをかけて2匹の犬を連れた老人、教師がパーティーで知り合ったカトリーヌと言う女性、主にこの4人が登場するがレネ監督の「去年マリエンバートで」と同様に複雑な関係性を浮き彫りにしている分、話を追っていくのが精一杯だ。

簡単に説明すると港で出会った女性が行方をくらまし、それを捜索する教師の物語である。

この映画ラストを目撃すると冒頭のフレーム外の笑い声や音が暗示=伏線になっていたことが観客に明らかにされる。

それに死んだはずの女が生き返ったり死ぬべきはずの男が生きていたりと同じ世界にいてはならないタブーな現実がこの都市では怪奇な事に起こる…

とにかく断片的なショットや時系列があってないようなもので、難解だ。

余談だがこの作品が作られるまでの過程にはある事情があったらしく「二十四時間の事情」の制作担当したアルフォンが監督にイスタンブールで映画を撮影してみないかと持ちかけたらしいのだが実際のところ彼の友人が変換できない貨幣を抱え込んでいたことによって困っていたところをトルコで撮影したその興行収入を全て彼に与えられるとの事だったらしい。

それと監督自身、妻との出会いがこのイスタンブールだったらしい。

ところが軍事によるクーデターによってあえなくトルコから帰国したグリエは新たな仕事を依頼されたそれがあの大傑作「去年マリエンバートで」の脚本だったらしい…。‬ ‪

まだ未見方はアマプラへ‬
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