さわだにわか

嘘をつく男のさわだにわかのレビュー・感想・評価

嘘をつく男(1968年製作の映画)
4.5
個人的ファースト・ロブ=グリエ体験は蛭子さんの「去年、マリエンバードで」というまんまタイトルの漫画で、映画も原作も見たことがなかったのであのアンニュイでヘタウマなシュールワールドは蛭子さん独特の天然かと思っていたが、「嘘をつく男」を見たらあれはかなりロブ=グリエのエッセンスを掴んでいたんだなという気がしてきたので蛭子能収おそるべし。

薄っぺらくて映像と同期しない宙ぶらりんの独白。意味ありげで何もなさそうな男たちの顔。先に「欲望の漸進的横滑り」を見ていたのであれと比べると随分真面目に映画してるな…と思いかけた緊迫感のある冒頭の逃走劇はいつの間にか隠れんぼとごっこ遊びに転じてるし、遊びのつもりだった死の騙りは不意に現実の死として現出する。

どれも蛭子漫画に頻出する要素で、逆に俺がここから連想したのはパチプロ男の勝利の帰還を待ち望む貧乏家族を隣の部屋の浪人生が壁の穴から覗く蛭子漫画の傑作「勝手にしやがれ」だった(違う映画になっちゃった)
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