フライ

THE PROMISE 君への誓いのフライのレビュー・感想・評価

THE PROMISE 君への誓い(2016年製作の映画)
4.2
ジェノサイドと言われたらナチス・ドイツのユダヤ人へのホロコーストを、知らない人は殆どいないと思うが、実は本作に描かれたオスマン帝国のトルコ人による、アルメニア人大虐殺が近代史における最初のジェノサイドだと言われているし、ナチスが参考にしたとも。そしてその事実を知っている人は少ないと思えるだけに、少しでも多くの人に見て知って欲しいと思える作品なのだが…

第一次世界大戦を目前に世界の超大国だったオスマン帝国は、衰退の一途を辿っていた。
1914年オスマン帝国の田舎に住むアルメニア人のミカエルは、昔から続く家業の薬剤師をしていたが、村の為にと医師を志していた。しかし医者になる為には大都市コンスタンティノープル(現トルコ イスタンブール)の大学で勉強する必要があり、その為には大金も必要に。金銭的余裕が無いミカエルは、殆ど持参金目的で村の名士の娘マラルと婚約し、二年で医師資格を取得し帰る事を約束し大学に行く事に。
ミカエルは、コンスタンティノープルで成功を収めた親戚の世話になりながら学校に通うが、そこで家庭教師をするアルメニア人のアナと出会い恋に落ちる。しかしアナはアメリカ人クリスの恋人であり過去に辛い事情も。クリスはAP通信の有名なジャーナリストで、オスマン帝国内の不穏な動きを情報収集していた。
刻一刻と迫る開戦に向けオスマン帝国は若者を徴兵。ミカエルも徴兵されそうになるが、学校で友人になったトルコ人で政府高官の息子エレムが助けてくれる。しかし町ではトルコ人によるアルメニア人への暴力が横行、郊外では虐殺も。そんな中でミカエルとアナは結ばれるが…

初めて見た時は、終盤までミカエルとアナのロマンスにご都合主義を感じたが、ラストそんな思いに至った自分に嫌悪感も。そして見終わってから色々調べ、史実とフィクションを織り交ぜたストーリーである事を知り、製作者がこの事実を伝えたい強い意志と信念みたいなものを強く感じ、痺れた。
当然この手の作品には、見ていて強い怒りや憎しみを覚えるが、同時に全く別の思いも。

去年アメリカが、オスマン帝国のトルコ人によるアルメニア人へのジェノサイドを認めたと言うニュースを観て、この作品を思い出した。
親日国であり、個人的にも好きな国トルコの負の一面を見る作品なだけに少し心も痛いが、同時に、この事実を未だに認めないトルコ政府には吐き気を覚える。
こう言う映画は、二度と同じ事を繰り返さない上でも警鐘になるし、語り継ぐ上でも大切だと思える作品。事実歴史から学ばない今のロシアを見ると良く分かる。

作中で展開されるロマンスも、三角関係やミカエルに自己中も感じてしまうが、そんな男女関係とアルメニア人へのジェノサイドが絶妙に展開して行き、とても考えさせられる作品に仕上がっている上、何気にキャストも豪華なのでかなり見応えも。とは言え決して気分の良い内容では無いし、人によっては見るに堪えないシーンもあるので、鑑賞する際は覚悟の上で。
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