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シラノ・ド・ベルジュラックのtanayukiのレビュー・感想・評価

3.6
「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい」を見る前の予習第二弾で、ドパルデュー版のシラノに会ってきた。

詩人にして剣豪のシラノは弁が立つし腕っ節も滅法強いが、特大の鼻にコンプレックスを抱いていて、美しい女性を前にすると、いつもの自信が影を潜め、つい奥手になってしまう。従妹のロクサーヌの前で大胆になれるのは、匿名(というかクリスチャンという名の盾)に守られたときだけ。ということは、シラノにとってもクリスチャンは必要な存在だったのかもしれない。

言葉だけで思いの丈を語り、相手はその言葉に溺れる。会えないからこそ燃える愛。文学少女のロクサーヌが求めたのは言葉だけで、実体はいらなかったのかと思わせる。あるいは、言葉に酔った自分が好き♡的な何か。

ならば、シラノは? これを悲哀と片付けてしまうと、ロクサーヌに捧げた15年は時間のムダということになりかねない。そうじゃなくて、シラノにとってもそばに寄り添い続けた時間は幸せだったんじゃないかな。あるいは、シラノ自身も自分の言葉に酔っていたとか。意外と似たもの同士のような気がする。

△2020/11/23 DVD登録。スコア3.6
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