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ショコラ 君がいて、僕がいるのchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

 20世紀初頭、ベル・エポック期のパリで、ロートレックが描き、リュミエール兄弟が撮影し、チョコレート菓子の広告にも起用された黒人芸人ショコラ。ブローデルやブリュデュー、さらにはトマ・ピケティなどが名を連ねるフランス社会科学高等研究院教授で移民史研究で知られ、演劇にも造詣が深い歴史社会学者のジェラール・ノワリエルの再発見による研究を原案に、大ヒットした『最強のふたり』(11)で黒人初のセザール賞主演男優賞を受賞したオマール・シーを主役に迎えることで映画化が実現した。
 キューバで奴隷の子として生まれ、10歳のころスペイン人の商人に買われて海を渡るも逃亡し、サーカスの一座にたどり着いた青年が、イギリス人道化師フティットとのコンビで一躍大人気に。が、「人間動物園」と称して植民地から連れてこられた黒人たちが見世物になっていた時代。洒落たスーツを着込み、贅沢な自動車を乗り回しても、ショコラの身に屈辱は深く刻まれ、困惑は屈折し、酒とアヘンとギャンブルに溺れ、シェイクスピアのオセロ役に挑むという一大冒険も差別の壁に阻まれる・・・・・・。
 ショコラの死から百年近く。オマール・シーというスターなくしては生まれなかった映画だろう。それでも、死の床に訪ねてきてくれたフティットに、「俺は肌の色を変えたかった・・・・・・ばかな黒んぼだ」とつぶやくショコラに感情移入することは、正直、日本人の観客としてはハードルが高い。だが、それを補って余りあるのが相方のフティット役を務めたジェームズ・ティエレ。チャーリー・チャップリンの三女と結婚し、ふたりでヌーヴォー・シルク(新しいサーカス)を始めた芸人の父のもと、4歳でサーカスの初舞台を踏んだというパフォーマー。人々の笑いをとればとるほど、自らは孤独の穴に落ちていく天性の道化師フティットを見事に演じている。道化とは永遠にはずれ者であるさだめ。その意味で、フティットはショコラの最も近くにいた人間だったのかもしれない。
 『最強のふたり』だけでなく、『サンバ』(14)で非合法移民のサンバ(オマール・シー)との恋愛模様を演じたシャルロット・ゲンズブールがとてもチャーミングだったように、オマール・シーが相手役との間に創り出すケミストリー(化学反応)は、たぶんハリウッド映画にはちょっと見られない魅力。
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