saorino

聖の青春のsaorinoのレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
3.7
■ただ一つ、負けられない闘いがあった。

「東の羽生、西の村山」。今から19年前の夏、29年の生涯すべてを将棋に捧げた、ひとりの男の人生が幕を閉じた。余命を告げられても、彼は碁盤の前に座った。棋士・村山にとって、指すことは生きることそのものだった。

今、将棋といえばだれもが思い浮かべる人がいる。前人未到の29連勝をあげた14歳の少年だ。

もし村山が生きていたら、彼に何を語るだろう。なにより真っ先に、「将棋は殺しあいじゃ」と対局を挑むだろうか。「見ている海が違う」と若きライバルを歓迎するかもしれない。どちらにしろ、一寸の濁りもない純粋な眼差しが見える。

平凡で退屈な一日は、きっと彼にはしあわせすぎる一日だろう。「お前のどこが命賭けとんじゃ!」生きることを投げ出したくなった村山の叫びが、胸に刺さる。
saorino

saorino