かかか

聖の青春のかかかのネタバレレビュー・内容・結末

聖の青春(2016年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

音が印象的で、聖が部屋で何もせずただ寝て、ただやっと生きているというとき、部屋には蛇口から水滴が一滴一滴落ちる音がしている。まるで命が削られていく音のように響き渡る。
同じように、将棋の駒をさすときのビシッという力強い音も、生きるという音が響きわたると同時に、命を削り、死へと近づく足音のような音のように感じる。将棋をさすことは生活の一部で、生きること。でもそれは死ぬこととどうしても隣り合わせで死へ自ら歩んでいくことでもある。

羽生さんと定食屋で語らう場面。ふたりの後ろには大きな窓があって、温泉街だから淡く光りづいていて、そこになめらかに雪が降り滑ってゆく様がとても綺麗だった。
ふたりは海へと深く潜るという話をしていたけれど、その空間こそが深く潜ったその場所であるような気がしてくるような、場面だった。

あと染谷将太が演じる江川くんがとてもいい。最後のチャンスである試合に負けて聖と森先生と飲んだあと、聖に負け犬呼ばわりされて思わず殴りかかり、聖が倒れ込んだあとにそれを見ながら自分のこれまでとこれからを睨みつけるように佇む後ろ姿がとてもつらくて、ひょうひょうとしながら誰しもが持つ熱いところを持て余すようなひとが染谷将太はとても似合うしすごかった。

あと羽生さんを夜においかけて、振り向かれて、立ち止まって、またおいかけて、というシーン、まるで聖が読む少女漫画のような場面で、聖の羽生さんへの純粋な憧れや尊敬が出ている場面なんだけど、少女漫画のようで、聖らしくもあった。

あと大阪の本屋にいる新木優子演じる店員への淡いとても淡い純粋な恋心の滲ませ方がとてもよかった。
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