チーズマン

スイス・アーミー・マンのチーズマンのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
3.8
十得ナイフの死体版。
スイスアーミーナイフならぬ『スイス・アーミー・マン』、原題もそのまんまだったんですね。

しかし個性的な作品でしたねえ。
無人島に流されたポール・ダノが同じく流れ着いた死体と友達にねります。
『キャスト・アウェイ』を更に“現代的”に捻くれさせたような作品でした。ただ観終わった余韻は対照的でしたね。

ダニエル・ラドクリフ演じる“死体”のあまりの多機能ぶりに日本の家電メーカーは騒然としたのではないでしょうか。笑
というかよく演じたなこれ、頑張りに拍手したいです。

あと劇中で流れる音楽は全て無人島にある物で出せる音だけで作られた音楽なんですが、これがすごい良かったですね。

ポール・ダノ演じるハンクがあちら側(文明社会)で、いかに今まで様々なのもに抑圧されて生きてきたのかということが、色々な“象徴的な何か”によって描かれますが、この作品においてその象徴的な何かの最たるものが「オナラ」ということで、数えるのが不可能なほどのオナラが鳴り響きます。
そして序盤のハンクの「走馬灯なんて何も見えなかった」というセリフにあるように、向こう(文明社会)でも独りぼっちだったことにあらためて気付かされていくんですよね。
そして走馬灯〜のセリフが後に効いてきます。

あと、オナラに伴って下ネタも直接的なやつが多いですが、その下ネタの数々もハンクの抑圧された何かとして見たら笑いながらも切ないものが漂いますね。

そんな感じで、様々な想像を膨らますことのできる余地が多い映画だと思います。
そして、観客それぞれがどういう想像を膨らませながら観てたかでラストの仰天シーンの印象が変わるんだろうなあと思いました。
ちなみに自分はラストはすっごい切なく感じました。
いやポジティブに全然とれるのも理解してますが、なんかね、とうとう扉をバタンと閉めてそしてガチャンと鍵を掛けてしまったように自分は感じてしまって、ああ…と、かなり切ない余韻が残りました。

終盤ぐらいまでずっとキラキラして楽しくて、ラストで一気に揺さぶられる、思ってた以上に印象に残る映画でした。
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