ヒラッツカリー

スイス・アーミー・マンのヒラッツカリーのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
4.3
生活を捨て、冒険をせよ

と、どっかの偉人が言ったような名言じみた言葉が浮かんだ。
劇中には全く関係ないが。帰りの車の中でふと思った。
もし。今の生活を捨てて冒険的なことができるだろうかと。
色々思うところがある。だけど。
無人島に何もない状態で生活するとなると話は別。必要な道具がないと火を起こすことも、寝床を作ることも難しいかもしれない。あわあわしていたら日が暮れ、猛獣の餌になって終わるか、飢え死にか。
万が一、流れ着いたゴミで釣りをしたり、火を起こせたとして延命しても、ずっと孤独で喋る相手がいなくなるとその生活が苦でしかなくなり、自殺まで考えるだろう。
もし、自殺寸前で漂流してきた死体を見つけ、助けようとしても死んでいるのならば墓でも掘っておしまい、なのが普通。

が。この物語はここから始まる。
死んでます。死体です。
オナラしているのです。結構な勢いで。
そのまま、海に行くわけです。
自殺しようとした彼も「え?うそだろ!?」
と追いかける。そのままオナラし続ける死体に引っ張られ、まさにジェットスキー状態
(死体がダニエルラドクリフなので、ジェット“ラドクリフ”スキーか。ジェラドスキーか。)
ここでタイトル、ズバァァン!!!
冒頭15分でもう取り込まれました。
バカじゃん。
だけども。それで終わらせないのが映画。そんな映画が大好きだな。
その後、無人島から奇跡の生還を果たすが、流れ着いたのも無人島?で。
とりあえず、助けてもらったラドクリフ似の死体を担いで洞窟に。
そこで眠れないので話し出す主人公。
死体は喋らず、雨露に濡れたまま主人公は寝てしまう。
翌朝、目がさめると
やれ雨露を溜め込んだ死体がウォーターサーバー以上の噴射で水を出すわ、
何故か喋り出すわでもう、もう…
主人公ハンクはビビって殴って避難。
それでも「痛いなぁ…」と喋り続ける死体メニー。
そこから奇妙な共同生活。
メニーは記憶をなくしていた。何もかも無知でいたので色々と教えつつ、ハンクはメニーの便利機能を多用していく。
前歯カッター(髭剃り)
空気銃(口から凄い勢いで物を飛ばす。)
裁断(死後硬直で硬いのか、反動で木を割る)
摩擦での火起こし
等々、、、、
暮らしていける環境、話せる友人ができ楽しくなる生活。
それ以上に元の故郷へ帰りたい気持ちの方が強いので、ハンクはメニーの記憶探りつつ、帰る道を模索して行く…

とまあ…
厨二病です。完全に。
だけどね、健全に育ってきた人は絶対思ったことでしょう、
あんなこといいな!
できたらいいな!
って。それがリアルに、死体として、ダニエルラドクリフとして出てきただけなのかもしれない。
見ていて何より楽しかった。リアルファンタジーですこれは。
孤独を抱える人々に、ちょっと形は変だけど
微かな希望をあたえてくれる、お話だったと思います。
笑えて、最後はぐんと切なくなる。
まさかこの映画で泣くとは…
(ブレードランナー2049とは違う“まさか”)
素晴らしいです。これはね、誰かと見た後話したくなる。
バカだけど愛すべき作品。
こりゃあ、僕の中の2017年間トップ5に入るなこりゃ。
ヒラッツカリー

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