ナツミオ

パターソンのナツミオのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.0
Amazon Prime鑑賞
『ネェ、あなたの詩、何とかしたらいいのに。世に出すとか!』
〜妻ローラ

『白紙のページに広がる可能性もある』〜ある日本人詩人

バスの運転手が日常生活を綴る作詞と日常生活と何気無い日常と出会いを描いたジャームッシュ監督作品。
初鑑賞、フォロワーさんからのおススメ作品。

主人公パターソンの日々の日常を綴る作詞の世界にどっぷりと心地よく浸った。

ロサンゼルス映画批評家協会最優秀主演男優賞(アダム・ドライバー)受賞
トロント映画批評家協会最優秀主演男優賞(ドライバー)受賞
カンヌ国際映画祭バルムドッグ賞受賞(ネリー)
カンヌ国際映画祭オフィシャル・コンペティション出品

原題 『Paterson』

2016年米・独・仏作品
監督・脚本 ジム・ジャームッシュ
撮影 フレデリック・エルムズ
音楽 Sqürl
詩 ロン・バジェット
出演 アダム・ドライバー ゴルシフテ・ファラハニ ネリー(イングリッシュ・ブルドッグ) バリー・シャバカ・ヘンリー 永瀬正敏

(アマプラ番組内容より)
ニュージャージー州パターソンに住むバスの運転手のパターソン(ドライバー)。彼の1日は朝、隣に眠る妻ローラ(ファラハニ)にキスをして始まる。いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、心に浮かぶ詩を秘密のノートに書き留めていく。
帰宅して妻と夕食を取り、愛犬マーヴィン(ネリー)と夜の散歩。馴染みのドク(ヘンリー)のバーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅しローラの隣で眠りにつく。
そんな一見代わり映えのしない毎日。パターソンの日々を、ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。

月曜から次の週の月曜の朝までのパターソンの日常が描かれるが、
同じ様な生活ながら、代わり映えしない日常ながらも、出会う個性的な人々との関わりや物事などが、コメディチックに描かれる。

アダム・ドライバー演ずるパターソンが、どこかぎこちなくも真面目に働くバス運転手の役柄を好演。
妻ローラ役ゴルシフテ・ファラハニは、後の出演作『バハールの涙』(2018)のバハール役で記憶に残る女優さん。
エキゾチックな魅力があり、本作ではまた違った魅力も。

あと、パターソン、ローラ夫妻の家族にイングリッシュブルドッグのマーヴィンがいて、彼(彼女⁇)の演技も中々、終盤の”あるイタズラ“での表情が名演技。

また永瀬正敏演じる、大阪から来た日本人の詩人役も、少ない出番ながら印象の強い演技も良し。

音楽はジャームッシュのバンド
「Sqürl」がパターソンの詩の場面など雰囲気を盛り上げる劇伴。

パターソンが「秘密のノート」に綴る詩の同じフレーズが何度も登場し、画面にも文章が流れるので詩の余韻が長く続くのが良く、印象に残る。
【パターソンの詩】
・"愛の唄“
(これぞ世界でもっとも美しいマッチだ…)
・"三次元の詩“
・"詩“
(僕は家にいる。外は心地よい暖かく積雪の上に陽光…)
・"光の詩” ☆お気に入り
(君より早く目が醒めると君は僕の方を向いていて…)
・"走行“
(僕は走り続ける…)

【効果的に使われる色々な小物や場所、人物】
(朝)
・腕時計が示す時刻
・朝食のシリアル
・お気に入りのマッチ

(出勤)
・ランチボックス

勤務
・バス発車待ちで書く「秘密のノート」
・いつも何かの不平をこぼす同僚
・ランチボックス内のランチが毎日違う

帰宅時
・毎日帰宅時、ポストの傾きを直すが、翌日また傾いているのは……原因がわかった時は笑う‼️
・ローラが部屋の内装や服、色々なもののデザインを変える。白黒デザインはランチまで⁈

夕食
・毎回変化あるメニュー
・アーヴィンを連れて食後の散歩
・ドクのバーで飲むビールとジョッキ

印象に残るシーン
・夫婦の会話
「子供を作るなら双子がいい」以来、毎日色々な双子に遭遇!
・通勤途中に会う双子のおじいちゃん
・ドクのバーで会う双子の兄弟
・信号待ちバスの前を横断する黒人双子の少女
・バス内で欠伸をする双子の白人少女
・帰宅途中に出会う詩人の少女リサ。
母姉を待つ間、彼女の詩に聞き入る。出てきた姉とは双子。
・バス故障時の乗客に双子の老婆

・バスの電気系統が故障した話を聞いた乗客の老婆、ローラ、ドクがそれぞれ同じ反応をするところは笑える!
「危なかったな!爆発して火だるまになるとこだ!」

・マーヴィンとの散歩で出会う、オープンカーの若者4人組
「"ワン・ジャック”に気をつけな!」

・ドクのバー"伝道の壁“の候補者に"イギーポップ”

・コインランドリーのラップ男
の歌に耳を傾けるマーヴィンとパターソン

・通販ギターの練習の成果
ローラの弾き語り「線路は続くよ、どこまでも」

撮影
・バスのフロントガラスに映る建物の風景とアングルが良い。

・バスの車窓から映る外の風景と反対側も映り込む映像も素晴らしい。

ジャームッシュ監督が得意の派手な展開は無いが味のある、何回も観たくなる作品。
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