『リミッツ・オブ・コントロール』でランボーの詩のたった一節を、殺し屋×スペインという装置を用いて2時間の映画に翻訳したジャームッシュ。今度は全編に"詩"そのものを散りばめて、バス運転手の日常を描く。
パターソンに住むパターソンの1週間の物語。
小さな出来事が続く日々のルーティンの中、ゆっくりと変化していくパターソンや周辺の人々が、ジャームッシュ独自のトーンと演出でまとめられているため、全く飽きずに観れた。
主人公が詩を綴る際に文字や声、パターソンの街並みや川が同時にコラージュされる事で、詩そのものを観ている気がして、読まれるたびに心地よい気分になる。
全編で流れているアンビエント、エレクトロニカ調のST(ジャームッシュもメンバーのバンドが演奏)、バスや家の中からでも聴こえてくるパターソンの街並みの音響が凝られており、上記ルーティン内の変化やコラージュ等に一役買っている。
事件性の無い物語において、金曜日に明かされる小さな真実が個人的にツボだった。
大作の大音響、迫力の映像を体感するのも劇場の醍醐味だが、一方でパターソンの些細な、けど感性に溢れた日常に浸るのも逆に劇場でしか味わえないものだと再実感した。
これは勝手な推測だが、終盤に出てきた永瀬正敏演じる日本人の詩人は、もしかしたら『ミステリートレイン』に出てきたジュンの双子なのかもしれない。