ハル

パターソンのハルのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
舞台はニュージャージー州パターソン。

街と同じ名前のバスの運転手が主人公である。

街の一角に構えた一軒家に愛する妻と愛犬とともに暮らし、朝が来ては職場へ出かけ、夜が来ては散歩がてら近所のバーに出向く。そんな日常の中で、彼は詩作に耽っている。彼の秘密ノートは、密かに書きためた詩であふれ、そのいずれもが珠のように美しい。変化のない日常にも輝ける一瞬はあって、それこそが詩作に耽る彼の想像力をかきたてていた。

だが、日常は、必ずしも、平穏を約束しない。愛おしき日常は、招かれざる非日常によって侵されていく。

ジム・ジャームッシュが長い時間をかけて温め、世に送り出した作品。

一遍の詩を編むように平穏な日常が綴られている。時が経つにつれ、そこには綻びが生まれるものの、思いかけなく訪れた非日常によって、また息を吹き返す。


一日が終わるたびに夫婦の姿が俯瞰で描かれるのが微笑ましかった。また、愛犬のマーヴィン君を含めて、小道具の使い方も秀逸。画の作り方がいちいちオシャレな心憎い監督さんである。

尚、今作には、28年ぶりに永瀬正敏が出ている。ここで彼は重要な役どころを果たしているが、その存在感はハンパなかった。

個人的には、「オンリーラヴァーズレフトアライブ」を超えた。
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