Mikiyoshi1986

パターソンのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.0
ジャームッシュ待望の新作!
彼の眼差しはどこまでも衰えることを知らず、当たり前にそこに存在する日常の神秘性、そしてその微かな啓示の片鱗を映像詩というカタチで惜しみ無く我々に語りかけてくれます。

平穏な暮らしはかけがえなく、日々の営みは尊く、すべての事象はみな環の中に収まっているかのような感覚が見事に共鳴。
eyっぽく云うなれば「感受性応答セヨ」と。

そんなジャームッシュの語り口はやはりこの上無く映画的であり、彼のブレないスタンスはもはや円熟を通り越して匠の境地に入っておられます。
いやはや脱帽の限りです。

今世紀最大級の名優アダム・ドライバーがバス・ドライバー役というキャスティングも、パターソン市のパターソン氏という設定も、本作を観ていると強ち大袈裟な話ではないなって風にも思えてきちゃう。

クリエイティブな美人妻と愛らしいブルドッグが居る暮らしの中、仕事をして合間に趣味の詩を書いて散歩してバーに出掛け思いがけず人と出会う。
ありふれた1週間に、我々は確かな意味を見出だすことができます。

何気ない日常も、ふと目を凝らせば偶然に見せかけた必然があり、不運に見せかけた幸運があり、不思議な連なりは日々を紡いで芳醇な人生を構築してくれる。
ジャームッシュのリズムは、そんな景色を鮮やかに彩ってくれるのです。

そして一番おぉっ!て思ったのは、ウェス・アンダーソン「ムーンライズ・キングダム」のあの少年少女カップルの成長した姿を思わぬシーンで拝めたこと。
ジャームッシュさん、ほんと粋すぎるよ!
Mikiyoshi1986

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