秋日和

パターソンの秋日和のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
レインコートを着ながら、ひたすらシャワーを浴びる時間。
喩え毎日が同じことの繰り返しだと思えたとしても、決して同じではないんだぜと、ジャームッシュが囁いているかのようだった。それは丁度、外見上では同じ人間に見えてしまう「双子」が実際のところ、別々の人格を持っているのと同じことだと言ってしまってもいいかもしれない。あるいは家のカーテンに描かれた幾つもの丸が、実はひとつひとつ異なったサイズだと言うこととイコールなんだと乱暴に決め付けてもいいのかもしれない。
同じに見えて、実は違う。注意深く物事を見ていないと、オモチャの銃だって本物だと勘違いしてしまうこともある。もっとも、流石に地名と人名を勘違いする、なんてことはなかなかないのだろうけど。
「同じもの」なんてものはない。仮に、一人の男が書いた詩のノートをコピーすれば「同じもの」ができるというのなら、そんな行為は阻止しなければならない。外国語の分からない詩だって、訳せば同じものを味わえてるなんて思ってしまうのも間違いだ。
ジャームッシュが差し出してくれる退屈さはいつだって最高だし、それは決して同じものなんかではないのだと思っている。
秋日和

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