とし

パターソンのとしのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.6
詩をゆっくりと繰るような、穏やかで静かで、温かい映画。

物語は、ニュージャージー州のパターソンという町。一見単調な日々を送るバスドライバーのパターソンと、太陽のように明るくキュートな妻ローラの、とある一週間。

まるで感性を失うことを避けるように、スマホを決して持たないパターソンは、秘密のノートに毎日詩を綴る。

愛すべき人との幸せな生活や、日常の中に生まれる変化の種、季節や自然の移ろいへの慈しみを大切に言葉にのせて、心を満たしていく・・・

とにかくセンスが良い。ジム・ジャームッシュ監督すごい。

役者。アダム・ドライバーきらいだったのに、大好きになっちゃった。本当に、こんな労働者な詩人が、アメリカのどこかにいるんじゃないかと信じてしまう。いや、いてほしい。そして奥さん役の可愛さは異常。

色。家の内装は、モノクロなのに、とてもカラフルに感じてしまうインテリアが不思議。澄んだ鮮やかな空。勢いよくおちる滝と古い橋と、色づいた樹木。スクリーン全体から、秋の香りをたっぷりと浴びる。

音。SQURL のエレクトロな音楽で始まり、日常音と、自然の調べに、マーヴィン(愛犬のブルドック)の鳴き声と、ギターの音色。そして何より詩のリズム。

お互いを尊敬し、お互いの好きなことを尊重し、お互いの役割を知っている。ケンカとかしないのかなぁなんて思いつつも、いつか喧嘩するところですら見て見たい。こんな素敵な夫婦の物語を、ずっと追って見ていたいと、そこまでのめり込んでしまうほど、優しさに包まれた映画だった。
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