鮭

パターソンの鮭のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.3
はいはい、ジム・ジャームッシュだからシュールでお洒落系なあの感じね、と思っていた自分に喝。
すごく美しくて愛おしい映画でした。

でも、退屈に感じてしまう方がいるのも、それはそれで間違いじゃない。
だって、ある夫婦の、ただの1週間のお話だから。

ニュージャージーのパターソンという都市。
そこに暮らす主人公・パターソンの、芸術家肌で愛情深い奥様と、愛犬との生活。

ある事象や、結末に向けて事が進むとかではありません。
毎日暮らす中での小さなトラブルや嬉しい出来事を丁寧に描き、目を背けたくなるような辛い事は完全な悪者は出てこない。

でもなんでしょ。
パターソン夫妻のお互いへの愛情深さと信頼感、尊敬感がまず羨ましいし、パターソンが詩を紡ぎ出すときの音楽も、ずぅっと聴いていたいほどの心地よさ。
毎日の日課の、ワンちゃんの散歩の土地のバーでの一杯が、なんだかすごくいいんです。
この夫婦の姿・在り方がこの日課に表れている気がして。

そして、スマホもケータイも持たない主人公が、とてつもなく羨ましい。
他人の尺度で動かない彼らが、すごく輝いて見えました。

思わずパンフレットも買ってしまいました。ラス1、買えてよかったです。
今のわたしには、ドンピシャに必要な映画でした。
鮭