あい

パターソンのあいのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.5

ジャームッシュは、すべてが理想通り、ではないけれども、平坦な日々をきちんと積み重ねていくことの美しさ、を教えてくれる。

有名な詩人になりたいわけではなく、本当のところは自分と大切なひとだけが、その詩を大事に思っていればよくて。
たぶん奥さんだってカップケーキやカントリーシンガーで本気で成功したいわけではなくて、200ドルでそんな無茶苦茶な夢を無邪気に口にし笑いあえる毎日を、2人で積み上げていければそれでいいのだ。

決して美味しくはない夕食にため息つきたくなることもあれど、夜になれば抱き合って眠り、朝起きたらまた仕事へ行って。
犬の散歩と行きつけのバー。
週に1度くらいはイレギュラーな事件も起こるけれども、どうにか処理すればまた日は昇る。

「もっといい相手がいるはず」
「もっとお金持ちになれるはず」
「有名になれるかもしれない」
「違う人生があるかもしれない」

こうだったら、という理想をあげればキリがないけど、仕事も奥さんも毎日の生活も、言い方は悪いけど「身の丈に合った」素敵なもので、戦わずともちゃんと毎日は進んでいく。

そういう日々の積み上げ方は、とても美しくって、なおかつ強い。
あい

あい