Jin

パターソンのJinのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
3.6
”白紙のページに広がる無限の可能性もある。”
”Sometimes an empty page presents the most possibilities.”



ニュージャージー州パターソンに住むパターソンさんのお話。
劇的なことは何も起こらない日常。それを丸々2時間みせるんだからすごい。


繰り返しの生活を送る「現実」がいかに愛おしいか。
一方で、夢や想像、詩の世界では自由に世界を描ける。
ただし、その二つは相互に影響しあっていて、それが「日常」だ、っていう。

そして、「繰り返しの生活」の中にも
「繰り返しの小さな変化・発見」が溢れているということ。
双子を見かけるとか、バスの乗客の話を盗み聞くとか、バーテンと話すとか。その美しさ。


「日常」の表現が細かくて面白かった。
毎朝起きる時間が微妙に違ったり、寝相が毎日違ったり、弁当箱の写真が違ったり。日常だけど、全く同じじゃないところがリアルで日常っぽいんだろうな。
リアルといえば、最後の「日本人っぽい英語」のリアルさも笑えた。
ただ、本当に「ただの日常」だけではなく、音楽の入れ方とか色彩の綺麗さで飽きさせないという繊細さもあって丁寧だった。


細かい描写として、やっぱり「今の映画」だなと思えたのは白人の登場が少なかったこと。
主人公以外のほとんどは、通り過ぎる人やバスの乗客まで黒人やアジア系だったし、男性同士のカップルも地味に登場してた。
多様性の描写は今っぽいよね。


すごく静かで落ち着いた映画だったけど、テーマが面白かったし、
アダムドライバーの表情の魅力と詩の面白さがよかった。
Jin

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