海

パターソンの海のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
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帰って来る。生まれて来る。
愛とは、豊かで繊細に波打つ、同じ道を毎朝通うちから、変化さえも持て成すちから。
ボールペンを滑らすたび言葉をくりかえすたび、かわいいひと、美しいひととそうあなたに伝えるたびに、感情は水の一筋になって、バス停で降りていく。耳の奥だけで音を立てて、すべての想いを流し揺らして、明暗をあわせて、永劫と瞬間を交ぜていく。

ほのかな、心地の良い、朝の光。毎朝二人の肌を照らして、詩のはじまりを詠むように。
詩人は記録ではない、きっと詩こそ記憶だ。
詩人こそ愛で、詩は愛の記録だ。
あなたがわたしの、朝目覚めるたびに世界中を愛している理由、不思議なほどにすばらしいほどに、言葉の生まれてくる理由。
日々は、あなたの、かたちがあるから美しい。
三万六千回の朝を迎えて百回の春を愛してもそれでもまだ足りないくらいに毎日が新しく美しいなんて、

平坦さ。それはいま、揺るぎなさを意味する。

帰って来る。生まれて来る。
百年後もここに居よう。新しく変わらずにいとおしい。毎日が奇跡だ。
海