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パターソンのcoroのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.2
朝起きると妻にキスをして、時間通りに家を出かけてはバスを走らせる。車窓を流れるいつもと変わらない景色や窓に反射するバス(自分)を見ながら時折悩んだりもするが、家にたどり着くと安心してまた時の流れに身を任せていく。そんな何気ない日々の機微に目や耳を凝らしながら詩を綴る、繊細なバスの運転手が主人公。

詩で溢れた世界に身を置く彼が唯一詩から遠ざかる場所が、恋敵の愛犬と毎食後散歩に出かけては立ち寄るバーで、そこで繰り広げられる他愛のない会話を介して素顔の彼を一日の終わりに見ることが出来、何故だか安心して次の日を迎えることが出来る。
それでも、一日として同じ日のない毎日を生きる繊細で脆そうな彼と、自由奔放でアフロディーテのような存在の妻との生活が余りにも愛で溢れてすぎているので、ふたりの行く末を無駄に心配しながら7日間を過ごしてしまった自分を悔やむ。

不安に煽られることなく続けて見た2回目。ここでやっと主人公たちと共に、いつもと変わらない慎ましやかで愛おしい7日間を過ごしてみる。

まるで虚構の世界の中でゆっくりと時を刻みながら過ごしているかのような夫婦がめちゃくちゃ魅力的。
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