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パターソンのpikaのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
評価高いし期待していたけどそれ以上だった。良すぎる!最高すぎる。
生きるのに直接的に不必要だが生活を彩るアイコンを印象的に用いる魅力、それ以上に生きるということをこのような形で映画で語る芳醇さは至高の感動だった。
毎日同じようなルーティンで生活していく様は映画という媒体ではほぼ見ることない、わざわざ映像として切り取る意味のないほどの細やかさだが、これこそが、ここにこそ人というものが、人生というものが詰まってると言えるくらい雄弁。
生きるってのは状況やら国やら文化やら違えど何ら変わらない、ってことを改めて確認することはどんな言葉よりどんなものより重要なことなんじゃないか、最も価値のあることなんじゃないか、この物語の彼らとの表面上の共通点はないがまるで自分の姿を見ているような、願望が描かれているような、哲学だったり詩だったり以上に生きて死ぬことの意味みたいなものが浮かび上がってくる。
同じルーティンでも同じ瞬間は二度と存在しない日々の尊さ。
退屈とも言える時間の中で、自分と同じように日々を過ごしている他人と交差する瞬間にハッと喜怒哀楽の感情が生まれて消えていく描写に「あるあるわかる〜」と思わぬ人はいないのではないか。
ギターを買うとかマフィンが売れたとか外食するとか映画を見るとか犬のいたずらだとか、そんなものが劇的な展開に見える日常というものの尊さ。

日々の繰り返しから生まれるズレで日常と人間というものを端的に表現し、目線の先をカッティングしたり微妙に抑揚する感情を映して少しずつ変化していく様を見せる。
まるで他人の目から自分を見ているように思えるほど身に迫る親しみやすさ、見ているのに見えていないものがふとしたキッカケで見えてくるあの感覚、別の世界なのにどうしようもなく共有してしまう、別の存在なのに「生きる」というものは誰もが同じというような、シンプルながらも粋なほどセンス良く作品に意図を練り込み語り尽すジャームッシュの演出力に脱帽。
なんてさり気なく優しいんだ。
何回でも見れるし何回も見たくなる。
最高!
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