オーデュボン

パターソンのオーデュボンのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
滝。

ニュージャージー州パターソン市。市と同じ名前を持つパターソンは、バスの運転手として働きながら日常を詩に綴る。美しい妻、飼い犬のブルドッグ、バスの乗客などと織りなす、彼の一週間を描き出す。監督はジムジャームッシュ。

毎日、ベッドで夫婦が目覚めるシーンから始まる。日によって寝相が異なり、そこからも様々なことが想像できる。そしてパターソンはバスの運転へ。乗客たちの会話は端々にユーモアを感じるが、特に意味をなすものではない。それを黙って聞いているパターソンの表情も良い。パターソンを演じるアダムドライバーの喜怒哀楽をはっきりと表すわけではないが味のある演技は、この映画の雰囲気とマッチしている。毎日ポストが傾いていた真相、美しい妻の少し変わった言動、詩人の少女との出会い、毎晩通うバーのマスター、度々登場する色んな双子、夫婦がキスをすると吠える犬、バスの故障。些細な出来事だがどれも愛おしく、可笑しく、物語に彩りを与えている。

パターソンが綴る詩も魅力的だが、中盤に登場した少女の"Water Falls”がとても印象的だった。その後何度か登場する滝のイメージは、流れるように続く日常を表しているように思える。ジムジャームッシュ映画の何も起こらないが滝のように続いていく日常は、この映画に住みたいと思えるほど魅力的だ。日曜日、永瀬正敏演じる「ア〜ハン?」の日本人が登場し彼にある物を贈る。再びルーティンを取り戻したパターソンの愛おしい日常は、また月曜に戻って繰り返される。映画では一週間が描かれるが、見ていられるならいつまでも見ていたい、そんな世界が広がっていた。