日向日向

パターソンの日向日向のレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.0
『詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの』

昨今の映画は如何なるジャンルと言え、絶対と言ってもいい程に大事件が起きる。アクション映画であれば大爆発、ラブロマンスでも修羅場であったりなんだのが起きる。そうすることで物語が映えるからだ。
だが、この映画にそんなものはない。
淡々とアダム・ドライバー扮するパターソンという人物の代わり映えのない一週間を描いている。

パターソンという静かな街で起こる様々な些事を、彼という眼鏡を通して鑑賞しているような気分になれる。
仲のいい双子の会話や、子ども達の夢、或いはアナーキストの公共の場所であることを考えていない会話など、バス内での様々な人間の日常を彼を通して伝えていく。そこから彼に起こる心境の機微を二時間を通して描いているように思えた。アダム・ドライバーの何もしてなくてもどこか泣き出しそうな表情がこの映画に合致していた。
あくまでだが、これは僕の感想。
他の人が見たらどう感じるだろうか、退屈に思うのだろうか、違う視点で僕の思いもよらない感想を持ち出してくれるだろうか。
誰かと見た後に、数時間程熱く語りたくなるような不思議だけど優れた映画だった。

余談だが、パターソンのような静かな街に住んでみたいと思った。
変わらない生活音に、特に大きな騒動は起こらない日々がつづく街に強いあこがれを感じた。まるであの街は街全体が創作のためのあるではないか! そう思えるような描き方だったのが猶の事素晴らしかったね。
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