すいすい

パターソンのすいすいのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.8
わたしのお守り的な映画。
何かを見失いそうになった時に観る。

今回はGW最終日に翌日からの日常生活に備えて観た。

(ちょとネタバレあるかも?でもネタバレ云々の映画じゃないのよね)



朝目が覚めて、そばに置いてあるチープカシオの腕時計で時間を確かめて、隣で眠る妻が少しだけ目を覚まし夢の内容をぼんやりと話すのを聞く。ベッドから出て前日に椅子の上に用意しておいた畳まれた洋服を手に取って着替える。リビングへ行きマッチの箱を眺めながらコンフレークを食べる。


同じような毎日が愛おしく感じる。
なので、生活に濁りが出た時に観ると心が清まります。

好きなシーンは、たくさんあるけど、
一番好きなのは滝のそばで妻のカップケーキをお昼休みに食べるシーンかなあ。
パターソンが仕事に行く時にいつも持っていく小さい工具入れみたいなのにカップケーキも入っていて、妻の写真もその中にあって。白と黒の妻オリジナルが過ぎる独特なカップケーキなんだけど、それを当たり前のように食べるパターソンに愛情の深さを感じるの。天真爛漫な妻の可愛らしさがパターソンを通じて伝わってくるのがすごく愛おしく感じる。このカップケーキを食べて滝を眺めてる時に書く妻に向けた詩もすごくあたたかい気持ちになる。

毎日犬の散歩ついでに、バーに寄ってビールをちびちび飲んで帰る。
ビールがあんまり美味しそうに見えないのもなんか良いのよね。
いつかの朝に妻がパターソンに、犬の散歩から戻ってくるとビールの香りがするのってそれもまた眠気まなこでふにゃふにゃ伝えるんだけど、そこに妻のパターソンに対する信頼度が伺えるの。普通犬の散歩ついでに毎回ビールの匂いさせて帰ってきてたら、なんとなく疑っちゃうし、何で寄り道してるの〜ってなりそうなところ、妻は何の気無しなの。むしろポエミックなの。

休みの日は、妻はパターソンに犬の散歩をお願いしてカップケーキを売りに朝から出かけるし、休みだからと言って2人で特別に過ごすとかではなく、お互いに自分の時間を過ごして、ふらっと映画を観に出かけるだけで、お互いに軸がある中で共生しているところも穏やかで良い関係性だなあと思う。

この映画を初めて見た時は、何か事件が起きるのを待ってた。でも大したことは起きない。見終わったあとにじんわりした気持ちだけが残る。なにか事件が起こるんじゃないかと思って観てた自分の邪念に気付く。

最後に永瀬が出てきて急に冷めてしまうのだけど、それは自分が日本人だからかなあ。

バスに乗って街を眺めたいねえ。
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