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パターソンのmaverickのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.3
詩を書くことが趣味の主人公。ニュージャージー州パターソンに暮らす彼はバスの運転手。詩を書くこと以外はごく平凡な男である。アーティスト志望の才女な妻がいる恵まれた生活に見えるが、代わり映えのしない毎日にどこか空虚さを感じていた。バスの運転手として勤務し、帰宅した後に犬を散歩に連れてゆく。馴染みのバーで一杯やって帰るのが密かな楽しみ。自分を尊敬し、詩の才能を認めてくれる優しい妻が大好きだが、料理の味だったり、生き方そのものにズレを感じてモヤモヤもしている。バスの運転手は気楽で自分に合っていると思う一方で、乗客の人々の聞きたくもない話が耳に入り、同僚の愚痴も聞かされる。こんな主人公の境遇に共感する人も多いと思う。本当はもっと違う人生を望み、代わり映えのしない毎日から脱却したいと願う。でも、大きく人生を変えるほどの決断には至らない。不満がありながらも、現状を生きるのみだ。主人公には詩の才能がある。ただ、それを信じれるだけの自信と勇気がない。彼がノートに綴る詩を朗読する形で、バックには彼の変わらない日常が描き出される対比が印象的だ。彼の屈折した感情が詩を生み出しているのだなと感じることが出来る。優しく温厚な性格の主人公であるが、心の中にはやりきれない鬱憤が蓄積されている。本当にやりたいことをやりたいようにやっている人は少ない。仕事や家庭、日常に生きながら我慢の連続ではないだろうか。人生はそんなもの。そう多くの人は思っている。だから本作は共感してしまうのと同時に、自分と通じる部分を見せられて辛くもなったり。そんな主人公に最後に訪れる展開は救いだ。可能性なんて自分でいくらでも作ることが出来る。どういう物語を描くかは自分次第なのだから。アダム・ドライバーは本作でも光っていた。彼の演技と共に、美しいなと思える作品だった。永瀬正敏が重要な役で出演している。好きな映画だ。
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