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パターソンのkoyaのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
ジム・ジャームッシュ監督の「何もおきない世界」が好きです。

月曜日から日曜日まで、ニュージャージー州のパターソン市に住むパターソン(アダム・ドライバー)は市内バスの運転手で特にめずらしい事は起きない。

朝6時すぎに起きて、妻にキスをして、丁寧にたたまれた服に着替える。
毎朝、同じ食事をして、ランチボックスを手に歩いて職場へ。
そしてバスを運転して、定時に帰る。
家に帰って、夜は犬の散歩をして、途中バーに寄る。

パターソンの好きな事は、詩を書くこと。
秘密のノートに詩を書いているけれど発表する気はない。
美しい妻を愛し、妻がケーキ作りに凝ったり、ギターを習い始めてもいつも穏やかに見つめている。

何も起きず、穏やかに過ごす。

それが今の時代、どんなに大切なことか......を丁寧に同じシーンを繰り返しがなら観る者に考えさせます。

何も変わらないことはいけないことなのか。
穏やかでいられることが一番ではないのか。
結婚して、職があって、家がある、犬もいる......それ以上のものは何も望まないパターソン。

アダム・ドライバーは穏やかで、おとなしい。自分が、自分が、と主張することがない。それは逆にとてもすごい事なんですね。

若いころは、大恋愛や大冒険、新しい事にチャレンジ、または鬱屈してすねてしまう、普通色々あるのにパターソンという人物は情に厚くて情緒は安定。それが大人なんだよ、という風に見えました。

そしていつも詩という形で、言葉を紡ぐ事を頭の中で考えている。
日本の詩と海外の詩とはちょっと文化が違うのでわかりにくいかもしれません。詩というより、短歌や俳句を詠む、という感じでしょうか。

公開当時、映画館で観たかった映画の一本。
日本人の詩人役で永瀬正敏さんがパターソンの背中をそっと押す、唐突に表れて、いきなり詩の話をする日本人という、ちょっとしたサプライズでした。

フレンチ・ブルドッグのマーヴィンがメイルボックスを毎日、倒してたのね、って所に脱力笑い。
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